(1)タイについて言及した日本語雑誌・図書から、社会・文化をめぐる言説について小説・紀行文・ルポルタージュなどのテクストと比較することでタイ表象が構築された経緯をたどり、その歴史的意味について分析した。 (2)〈戦後文学〉の小説・随筆・児童文学・教科書などのテクストの中のイメージの構築と流布の経緯について考察した。 (3)日本近代文学野中で、特に〈戦後文学〉の作品において、日本とタイ及びインドシナ半島の歴史・文化交流を背景とした作品について分析・考察した。 (4)上記の(1)~(3)までの研究成果報告として、本研究の研究協力者である、タイ人研究者2名(チュラーロンコーン大学のナムティップ・メータセート、チェンマイ大学のタナポーン・トリラッサクルチャイ)と共に、2017年度日本近代文学会国際研究集会「日本近代文学のインターセクション」におけるパネル発表「タイからのまなざし/タイへのまなざし-日本近代文学をめぐる受容状況」(11月26日、立教大学)において報告した。タナポーンの発表「タイで刊行された月刊誌「サンコムサート・パリタット(社会科学評論)」における日本文学の翻訳」、ナムティップの発表「タイにおける芥川文学の受容とアダプテーション」、久保田の発表「日本近代文学の中のタイ表象」を共同研究の成果として発表し、日本側とタイ側の双方向的な視点から共同研究の成果を報告した。また久保田の論文「戦争の中の観光-松本清張『像の白い脚』-」(『昭和文学研究』第75集)では、タイを含む地域へと研究範囲を拡大して考察し、タイ・ラオスを舞台とした1960年代のインドシナ半島を描いたテキストを分析した。以上のように平成27、28年度に調査・収集した資料に加えて平成29年度にタイのナショナル・ライブラリー等で調査した資料を基盤として、当初の研究計画にそって、成果を挙げることができた。
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