研究課題/領域番号 |
15K02254
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
久堀 裕朗 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (50335402)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人形浄瑠璃 / 文楽 / 淡路人形浄瑠璃 / 日本近世文学 / 日本近世演劇 / 義太夫節 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に記した通り、「Ⅰ.上演本文(浄瑠璃本・興行記録)の調査・分析」「Ⅱ.舞台演出(絵尽・大道具帳・劇評・写真・映像・芸談等)の調査・分析」「Ⅲ.復活上演プランの作成」を並行して進めた。 Ⅰについては、淡路座の独自作品『賤ヶ嶽七本槍』『二名島女天神記』の伝本を調査し、その伝承本文について整理した。特に後者については、淡路座の床本(南あわじ市淡路人形浄瑠璃資料館・兵庫県立歴史博物館蔵)を詳しく分析して、その伝承過程を明らかにし、論文「浄瑠璃『二名島女天神記』の成立と伝承」にまとめた。また近代徳島の新聞記事から淡路座興行記録を摘出し、資料紹介「明治から昭和初期の淡路座興行記録―徳島の新聞記事より―」にまとめた。 Ⅱについては、これまでに収集した淡路人形浄瑠璃資料館蔵の記録写真データを整理し、併せて明治期以降の劇評・大道具などの調査を進め、その成果を「『大江山酒呑童子』(保昌屋敷の段)復曲演奏に関する覚え書き―文楽と淡路座の近代―」のとりまとめに活かした。 Ⅲについては、淡路人形座の『賤ヶ嶽七本槍』左馬之助湖水渡りの段の復活上演(文化庁「文化芸術振興補助金(文化遺産総合活性化事業)」により公益財団法人淡路人形協会が平成30年1月28日に実施)に協力し、その上演本文と演出プランの作成を行った。Ⅰの作業を進めることのよって、大坂(大阪)・淡路双方でこの段がどのような形で伝承されてきたのかを詳細に調査し、近代大阪での上演に至る流れも確認した上で、現在の文楽には残らない淡路座の伝承として、『賤ヶ嶽七本槍』左馬之助湖水渡りの段を復活した。(当日のパンフレットに、「左馬之助湖水渡りの段」の伝承、『賤ヶ嶽七本槍』左馬之助湖水渡りの段【復活上演台本・復曲について】【あらすじ】【床本】を記した。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究目的」に掲げた目的に照らし、「研究実施計画」に記した事項をおおむね予定通りに実施している。 「研究実施計画」記載のⅠ・Ⅱ・Ⅲに分けると、Ⅰは順調に浄瑠璃本調査・作品分析を進め、その成果を論文にまとめることができたので予定通り。昨年度あまり進まなかった興行記録調査も一定の成果をあげることができた。Ⅱは単独の成果として論文にはしていないが、Ⅰ・Ⅲの成果の中に、その調査内容を活かすことができた。Ⅲは復活上演プランを作ることができ、上演も実現したので予定通りという結果であった。全体としては「おおむね順調」と自己評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、平成30年度も「Ⅰ.上演本文(浄瑠璃本・興行記録)の調査・分析」「Ⅱ.舞台演出(絵尽・大道具・劇評・写真・映像・芸談等)の調査・分析」「Ⅲ.復活上演プランの作成」を並行して進める予定である。 今年は本研究課題の最終年度に当たるので、これまでの調査のとりまとめを進めつつ、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲそれぞれについて、新たな課題に取り組んで、成果を残したいと考えている。特にⅠについては、昨年度の調査で新しい資料の発見もあったので、その整理・分析に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 年度替わりの時期に研究費使用の可能性があったので、一部の研究費を残した。 (使用計画) 残した額は、資料調査のための旅費、及び調査に関わる諸費用に充てるつもりである。
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