研究実施計画に記した通り、「Ⅰ.上演本文(浄瑠璃本・興行記録)の調査・分析」「Ⅱ.舞台演出(絵尽・大道具帳・劇評・写真・映像・芸談等)の調査・分析」「Ⅲ.復活上演プランの作成」を並行して進め、それぞれ以下の成果をあげた。 Ⅰについては、新出本として『菅原伝授手習鑑』の増補物「比叡山の段」を見出して翻刻し、関連する諸本(大阪市立中央図書館所蔵の旧因協会寄託浄瑠璃本)を調査した上で解題を執筆し、資料紹介「「菅原伝授手習鑑 比叡山の段」(文楽軒旧蔵)解題と翻刻」にまとめた。またこれまでの本研究の調査の知見も活かしつつ、論文「近松浄瑠璃における作品構想の連関―『堀川波鼓』『松風村雨束帯鑑』『鑓の権三重帷子』を例に―」を発表した。 Ⅱについては、これまでに収集した『浄瑠璃雑誌』劇評データの整理や、淡路人形浄瑠璃資料館蔵の記録写真データの整理を進め、Ⅲの成果等に活かした。 Ⅲについては、淡路人形座の『妹背山婦女庭訓』道行恋苧環の復活上演(文化庁「文化芸術振興補助金(文化遺産総合活性化事業)」により公益財団法人淡路人形協会が平成31年2月17日に実施)に協力し、その上演本文と演出プランの作成を行った。Ⅰの作業を進めることのよって、大坂(大阪)・淡路双方でこの道行がどのような形で伝承されてきたのかを詳細に調査し、近代大阪での上演に至る流れも確認した上で、現在の文楽には残らない淡路座の伝承として、道行恋苧環(独自の踊り歌入り)を復活した。(当日のパンフレットに、淡路座の『妹背山婦女庭訓』と衣裳山、『妹背山婦女庭訓』道行恋苧環・入鹿御殿の段【復活上演台本・復曲について】【あらすじ】【床本】を記した。)
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