研究課題/領域番号 |
15K02257
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研究機関 | いわき明星大学 |
研究代表者 |
松本 麻子 いわき明星大学, 教養学部, 准教授 (70708990)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 17世紀 / 武家 / 和歌 / 大名 / 連歌 / 俳諧 / 徒然草 |
研究実績の概要 |
本研究は、17世紀の武家歌人の和歌を通じた交流と、それぞれの文芸活動について明らかにすることを目的とする。近世初期の大名は、互いに和歌を贈答し、江戸の藩邸で歌会を開き親交を深めていた。残されている歌集の詞書や古記録から、その交流関係を知ることができる。武家はどのように和歌を学んだのか、和歌を詠むために用いた歌書はどのようなものか、といった問題を明確にすることも目的とする。27年度の研究実績は以下の通りである。 ① 17世紀の武家歌人を調査するにあたり、『正木のかつら』や『和歌視今集』の作者部類を活用し、重複して名前の挙がる武家を整理した。同時代の撰集を照らし合わせ、近世前期に武家歌人と目されていた人々は誰かを把握した。② 宮城県図書館伊達文庫を中心に、武家歌人の資料調査を行った。8月と3月の調査では近世初期の武家の歌会で用いられた組題に注目し、飛鳥井家と冷泉家が出題した歌題について明らかにした。その結果を「宮城県図書館蔵伊達文庫『組題 飛鳥井家』『組題 冷泉家』の翻刻と解説」(いわき明星大学研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇、第1号、2016年3月)としてまとめた。③ ①を踏まえ、17世紀の武家歌人の交流について具体的に示した。「武家歌人と飛鳥井雅章―寛文・延宝期を中心に―」として、その成果を論文にまとめた(今年度中に掲載予定)。④ 17世紀を代表する武家歌人、内藤義概の動向を知るため、交流のあった全国の俳諧好士の句を集めた『桜川』の注釈を行った。この成果を「桜川注釈(一)」(いわき明星大学大学院人文学研究科紀要、第12号、2016年3月)としてまとめた。⑤ 近世以降に注目された『徒然草』が、17世紀の大名の和歌・俳諧にどのように取り入れたか調査した。その成果を、「風虎発句考―『徒然草』との関わりを軸に―」と題し、10月に行われた俳文学会全国大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に計画していた研究課題は、おおむね順調に進展している。ただし、武家歌人の資料調査に関しては、少し予定よりも遅れている。その理由は、27年度は、宮城県図書館伊達文庫・肥前松平島原文庫・宮内庁書陵部、また国文学研究資料館での調査に限定されたことにある。今年度は、他の文庫や図書館などにも精力的に出かる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
27年度には、主要な武家歌人の交流の様相を大まかに把握することができた。今年度は、それぞれの家集を精査し、より具体的な検証を行いたい。内藤義概と親しかった小笠原長勝の『内匠頭源長勝集』や、岡本宗好の家集『露底集』は、詞書が詳細で、大名家で行われた歌会の年次も記されている。他にも、武家歌人として知られ、中川久恒・相馬昌胤と親交があった堀田一輝の『無名御歌集』(宮城県図書館伊達文庫)にも、武家の関係を知ることのできる詳しい詞書が残されている。儒者として幕府に仕えた林鵞峰の日記『国史館日録』には、義概をはじめ、義概の娘を室とした小出英安、義概と親交のあった鍋島直能ら武家歌人の名前が頻出する。このような資料をもとに、研究期間の2年目には、武家歌人の交流のさまを明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であったパソコンが予定より安価であったこと、また、旅費のうち、いわき~東京間がJRのキャンペーンで1ヶ月約半額だったこと、購入予定の古書が売り切れてしまい、購入できなかったことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、九州への出張を計画しているため、旅費が計画よりも増える予定である。今年度、やむを得ず使用できなかった約10万円を、旅費に使用する予定である。
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