本研究は、和歌を詠むことで培われた大名の交流関係を明らかにして、17世紀の武家歌壇の様相を具体的に示すことである。武家はどのように和歌を学んだのか、和歌を詠むために用いた歌書はどのようなものか、といった問題を明確にすることも目的とした。今年度まで、宮城県図書館伊達文庫・柿衞文庫・四国大学蔵凌霄文庫・島原図書館肥前松平文庫・今治市河野美術館等で調査を行い、大名が収集した歌書について調査を行った。またこれらの歌書は、全国にどれくらいあるのか、所蔵している機関はどこなのか、類似した装丁を持つ本はあるのか、といった点を国文学研究資料館のマイクロフィルムで調査した。今年度は最終年度であるため、武家歌人が関わった連歌文芸についても調査を行った。29年度の研究実績は以下の通りである。 ① 28年度に続き、17世紀における武家歌人の指導者である飛鳥井雅章について調査しまとめた。また、武家歌人が行った連歌についても調査した。② 宮城県図書館の伊達文庫・柿衞文庫・島原図書館の肥前松平文庫等を調査した。③ ①②の成果を受けて、柿衞文庫にある『寛永花壇千句』の翻刻を行い、「『寛永花壇千句』の翻刻と解説」(「いわき明星大学 研究紀要 人文学・社会科学・情報学篇」第3号、2018年2月)としてまとめた。また、武家の連歌資料をまとめた『連歌大観第三巻』(古典ライブラリー、2017年)を出版した。④ 武家歌人資料として、島原肥前松平文庫にて『延宝三年二月十一日飛鳥井家会始』『延宝二年二月十六日飛鳥井家会始』などの歌会記録を調査した。⑤ 17世紀を代表する武家歌人、内藤義概の動向を知るため、義概と近しい俳諧好士の句が多く入集する『桜川』の注釈を昨年に引き続き行った。この成果を「桜川注釈(三)」(「いわき明星大学大学院人文学研究科紀要」第15号、2018年3月)としてまとめた。
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