研究課題/領域番号 |
15K02260
|
研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
井上 隆史 白百合女子大学, 文学部, 教授 (10251381)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 三島由紀夫 / 野間宏 / 戦後文学 / 全体小説 / 長篇小説 / ラテンアメリカ文学 |
研究実績の概要 |
本研究は戦後派作家の主要長篇小説の創作過程の調査分析を踏まえ、ジャンルとしての戦後長篇小説を、日本文学、世界文学の大きな観点から位置づけ直そうとするものである。その第一段階として『三島由紀夫「豊饒の海」VS野間宏「青年の環」―戦後文学と全体小説』(新典社)を刊行し、現時点までの研究成果をまとめるとともに、今後の課題、展望を確認、整理した。 ここに示された構想に従って、科研費基盤研究(B)「英国モダニズムの情動空間に関する総合的かつ国際的研究」(25284058、研究代表者・遠藤不比人)、基盤研究(C)「太平洋戦争後の〈戦後文学〉に描かれたタイ表象の分析研究」(15K02250、研究代表者・久保田裕子)と連携し、国内外から30名以上の登壇者を得て「国際三島由紀夫シンポジウム2015」(11月14、15、22日 於東京大学、青山学院大学)を開催した。現在その成果を著作として刊行すべく(水声社)、編集を進めている。 以上と平行し、研究計画当初には予定していなかった大きな展開があった。第一に、ポーランドの文芸誌「elewator」から依頼を受け三島に関する論文を寄稿し、これに合わせてポーランドの国際学会で三島に関して発表した。そのポーランド出張の際にアウシュヴィッツ強制収容所を訪問し、アウシュヴィッツのような限界状況をめぐる思想、哲学的文脈を背景にして、近代小説の限界と可能性の再検討を試みた。第二に、メキシコで開催された三島由紀夫シンポジウムで招待講演を行い、その際1957年の三島のメキシコ訪問地を実際に取材して、その文学的意義を検討した。さらに、帰国前に米国アトランタのマーク・アンダーソン氏(ジョージア大学、ラテンアメリカ文学研究)を訪ねて面談した。氏は、本研究最終計画年にあたる2017年に日本に招きシンポジウムを行う予定で、その打合せを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、当初からテーマを共有する研究者との国際的ワークショップ、シンポジウムの開催を企図していたが、これが予定していた以上の規模の「国際三島由紀夫シンポジウム2015」として実現したこと、および、やはり当初は予定していなかったポーランド、メキシコ、アトランタに赴いての研究が実現したことによる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画2年目、3年目(最終計画年)に予定していたことの一部について、当初企図していたこと以上の研究を、既に行うことが出来た。これに基づき本年度前半は成果を著書として纏めることに集中し、後半からは研究の射程をいっそう拡張して、2017年の国際シンポジウムに備えたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初から企画していた、テーマを共有する研究者との国際的ワークショップ、シンポジウムが、予定していた以上の規模の「国際三島由紀夫シンポジウム2015」として実現したこと、および当初は予定していなかったポーランド、メキシコ、アトランタに赴いての研究が実現したことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究計画2年目、3年目(最終計画年)に予定していたことの一部について、当初企図していたこと以上の研究を、既に行うことが出来た。従って、諸経費に関しては、2016年度は当初計画以下の金額に収まることが予想される。2016年度前半は成果を著書として纏めることに集中し、後半からは研究の射程をいっそう拡張して、2017年の国際シンポジウムに備える予定だが、経費に不足が生じた場合には、研究者所属大学から毎年給付される研究費などによって対応する。
|