研究課題/領域番号 |
15K02263
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
伊賀上 菜穂 中央大学, 総合政策学部, 教授 (10346140)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 亡命ロシア人 / 旧満洲 / 文学 / 移民 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、日本人作家が文学作品の中で描いた旧満洲亡命ロシア人の表象を分析することにより、日本人の対亡命ロシア人観の特徴とその通時的変化を考察することにある。平成29年度は、日本国内および海外(ロシア、オーストラリア)の図書館・史料館における文献調査を行うとともに、海外での亡命ロシア人研究の実態調査を実施した。 国内では国会図書館資料を調査するとともに、滋賀県立大学や東京大学にて資料収集を行った。 海外調査はモスクワ、ハバロフスク、シドニー、メルボルンで実施した。ロシアでは文学・映像作品に関するロシア研究者の研究状況を調査すると同時に、旧満洲からの帰国者およびその親族へのインタビューを行った。シドニー、メルボルンでは、旧満洲からの移住者を訪ね、インタビューを行うと同時に、オーストラリアにおけるロシア系移民に関する研究状況を尋ねた。これらのうちオーストラリア調査については、『セーヴェル』誌(ハルビン・ウラジオストクを語る会)第34号に共著で報告書を寄稿した。 この他には、日本語文学における古儀式派の表象を分析した。分析結果はラトヴィアのリガ市で開催された第5回ザヴォロコ記念国際会議(ラトヴィア古儀式派研究所他主催)にて「日本の文学作品における満洲ロシア人無僧派古儀式派教徒の表象(20世紀中葉から現在まで)」と題して口頭発表した。その後、分析対象を古儀式派全体に拡大してまとめ直し、同会議の報告集に投稿した。 全体として多くの資料が集まり、また海外での研究状況も明らかになってきた。今後この成果をまとめ、公開していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自身や家族の健康状態により、分析と成果公開に十分な時間を取ることができなかった。そのため研究期間を1年延長し、研究の完成を目指すことにした。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、関連する文学作品や論文等の収集に努めると同時に、研究課題最終年度として、成果のとりまとめを進める。 まずはこれまでの分析結果を発表するために、旧ソ連研究関係の国際会議(現在は6月にモンゴルのウラン・バートルで開催される第9回スラヴ・ユーラシア研究東アジア学会を予定)にて、日本語文学における旧満洲三河コサックの表象について口頭報告を行う予定である。また近年議論を重ねてきた英語論文集出版プロジェクトが具体化してきたので、日本人による三河コサック調査とその表象に関して論文を執筆する。 これと同時に、収集した文学作品のデータベース化とネット上での公開準備を進めるが、ウェブサイトでの公開に先立ち、その内容の一部を国内の学会や雑誌等で報告したい。 以上に加え、旧満洲亡命ロシア人に関する調査や、ロシア系作家による文学作品の調査、およびソ連・ロシアにおける諸民族の文学的表象に関する調査も、続行する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は自身や家族の健康状況により、研究成果の分析と公表に十分な時間がとれなかったため、研究期間を1年延長して研究成果をまとめることにした。 次年度使用額は、資料の収集や整理にかかわる費用、および6月にモンゴルで開催予定の第9回スラヴ・ユーラシア研究東アジア学会での文学関連パネルでの報告にかかわる費用、そして英語論文集執筆時のネイティヴチェック費用などに使用する予定である。
|