研究実績の概要 |
本研究課題では、従来の歌舞伎研究において十分に活用されてこなかった、『役者名声牒』、『続名声戯場談話』、『続芝居年代記』という3点の「年代記」資料の翻刻を行ない、それを発表することで、当該分野における資料の面での研究環境の整備を行なうことを研究の第一ステップとしている。前年度の翻刻集の刊行を受けて本年度は、「年代記」を含んだ歌舞伎資料を文化的営為という観点から考究する、研究の第二ステップに進んだ。 具体的な研究実績としては、主に次の2点が挙げられる。第1に、平成29年12月10日に早稲田大学で開催された歌舞伎学会秋季大会のシンポジウム「デジタル化時代の歌舞伎研究」に、研究代表者がパネリストとして登壇した。本研究課題を通じて得られた歌舞伎資料の翻刻や公開の仕方についての知見をもとにしながら、インターネット等のデジタルツールを活用した歌舞伎の研究方法について発表し(題目「ゼロ年代歌舞伎研究の一事例」)、他のパネリストとの討議を行った。なお、このシンポジウムの内容は、歌舞伎学会の紀要『歌舞伎 研究と批評』62号(平成30年11月刊行予定)に掲載される予定である。第2に、平成30年3月に研究代表者および研究協力者1名が渡米し、ボストン美術館(Museum of Fine Arts, Boston)を中心に歌舞伎資料の調査研究を行った。番付、評判記、役者絵本等を閲覧したが、そのなかには当該分野で知られていなかった新発見の資料も含まれている。機会を得て翻刻紹介をしたいと考えている。
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