高度経済成長期以降の産業政策や国土開発をめ ぐる状況の変化により地域における「文学」・「文学者」が産業の振興にどのような役割を果たしたのか、またその影響について、文学館の研究員、社会学者、地方財政学者などと研究会を行い、総合的に検討してきた。さらに文化資源としての「作家」ならびに「作品」が再発見される社会的な背景(事情)について調査・分析を行った。 現在文学館は指定管理者制度、公益法人制度改革によって入館者数等の実績を問われるようになり、今後淘汰されていく施設も出かねない。文学館も時代に合ったキュレーションが必要となっている。例えば、標柱・説明板・碑といった名所・旧跡や、建造 物、石碑といったその地域に関連する人物に関する文化財は、歴史・文化を知る契機を一般に与えるとともに、街歩きの楽しみを提供する文化資源でもある。本学研究成果は文化資源の活用の仕方を提案し、コンテンツとして活用することに対して地域文学館と連携を取り、文学研究のみならず観光案内・生涯教育・学校教育における調べ学習など広く利用価値のあるデータベースとなっており波及効果を期待することができる。 また、改造社の『現代日本文学全集』(1920年代)・『新日本文学全集』(1940年代)についての研究の連続性のもとに1950年代に出された『現代日本文学全集』(筑摩書房)・『昭和文学全集』(角川書店)や個人作家全集の刊行などの全集出版事業とその宣伝活動について調査・分析を行い、文学全集という制度が成立するには時代との折り合いが重要であり、それに沿った作家ヘゲモニーがそのつど創出されることを明らかにした。「全集」に 内在する「政治性」について改めて考えるとともに、歴史的な検証を行い、文学研究も文化産業として位置付け、計量的に分析を行うことの重要性を提起した。
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