東アジアで「革命」と「ベトナム戦争」をめぐる言説が氾濫していた時期に、「日本語」が旧植民地・旧占領地において、軍事独裁への抵抗の言説を支える役割を担っていたことに注目した研究である。日本による東アジア諸国との国交正常化が経済的侵略を意味していたのは確かである。しかし、それを、東アジアの冷戦構図だけで捉えると、ベトナム・中国・韓国・などで生じた軍事暴力とそれに対する抵抗の言説から、同時に見られる、日本語の複雑な役割が見落とされてしまう。本研究は、この時期の「東アジア」の問題に、「日本語」(文学―文化)の役割の問題を節合させることによって、新たな思想的地図の構築のための土台作りができた。
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