研究課題/領域番号 |
15K02270
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
林 淑美 立教大学, 文学部, 特任教授 (80445155)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本近代文学 / 思想と文学 / 昭和時代と文学 / 歴史と人間 / 作家と肉筆資料 / 中野重治 / プロレタリア文学 |
研究実績の概要 |
日本学術振興会科学研究費を平成27年度から交付された本研究は、中野重治の肉筆原稿、書簡、日記などの調査と研究である。加えて、最近困難な状況にある文学館との協力の社会的意義の追求も目的である。中野重治の第一次資料の大方は、次の4館が所蔵している。石川近代文学館(肉筆原稿等)、神奈川近代文学館(書簡・日記の一部等)日本近代文学館(原稿、遺品等)、中野重治文庫記念坂井市丸岡図書館(書簡・肉筆原稿・遺品等)である。本研究がおもに調査・研究を行う石川近代文学館と中野重治文庫において、前者は肉筆原稿の公開のための作業と目録の刊行、後者は書簡・肉筆原稿の整理、所蔵リスト作成、その上での内容の調査である。中野重治の日記については、昭和38、39、40年分の全頁撮影とPCによる入力、本文点検、注作成等の作業を進行させている。 昨年度平成28年度は、27年度に続いて、中野重治文庫記念坂井市丸岡図書館所蔵の書簡及び肉筆原稿の整理作業、石川近代文学館での、肉筆原稿公開のための作業と目録刊行のための作業を順次行った。中野重治文庫においては、28年度、新たに「中野家文書類一覧」と名づけられた資料の整理を行った。これは中野家に伝えられた江戸期の古文書類を含む、全345点の資料である。文庫によってリストは作成されているが、保存の仕方が不適切なため改めて保存作業を行っている。これらの文学館の作業と並行して、日記の研究をおこなっているが、この作業は研究協力者四名と中野重治ご遺族にも協力いただいて、本文起しと点検、注立て項目の選定を行う。日記は昭和40年から始めて38、39年と進めている。27年度に40年の半年分が終了した作業は、28年度は、40年の後半と38年4月まで終了した。アルバイトによるパソコン入力・データ化作業は、昭和40年、38年分が終了し、39年分に取掛っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度から科学研究費を交付された本研究は、「研究業績の概要」の項に記したように、平成28年度は中野重治文庫記念坂井市丸岡図書館での書簡及び中野家に伝えられた江戸期の古文書類を含む資料の整理を行った。福井県坂井市にある中野重治文庫には4回、金沢にある石川近代文学館には3回、研究代表者である林淑美が出向いた。石川近代文学館では公開のための全点・全頁の撮影は終了し、現在はその画像の点検を行っている。中野重治文庫は、書簡がコレクション毎に分別されているものもあり、しかし分別されてあるだけで適切に保存されておらず、コレクション毎の簡単なリストしかない。とりあえず、適切に保存することを行っている。まとまったコレクション以外にも重要な書簡が多くあるが、リストも作られていない。28年度は中野家に伝えられた江戸期の古文書類を含む資料の整理に時間が費やされたため、上記の作業はなかなか進行しなかった。 日記研究は、研究会を設け、研究協力者四名と中野重治ご遺族にも協力いただいて、本文起しと点検、注立て項目の選定を行っている。研究協力者二名は京都在住で(立命館大学教員)なので日程調整が難しいが、立教大学において11回行った。日記は昭和40年から始めて38、39年と進めているが、27年度に40年の半年分が終了した作業は、28年度は40年の後半と38年4月まで終了した。3年分の全頁撮影は終了している。パソコン入力・データ化作業は、昭和40年、38年分が終了した。やらねばならない作業は山積している。特に日記研究における注は、項目の選定より大変な注付けそのものの作業に達していない。また中野重治文庫における整理作業は、保存作業に時間がとられて、書簡の所蔵リストの作成が中断したままである。あてられる可能な時間と労力から言えば、仕方ないのだが、進捗状況としては、やや遅れている、と言わねばならない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度から科学研究費を交付された本研究における平成29年度の、石川近代文学館の作業は、昨年度までに公開のための資料撮影、画像点検がほぼ終ったので、目録の刊行のための準備(一点毎の備考の作成、これは3割ほど終えている)を行う。何とか刊行したいと考えている。 中野重治文庫記念坂井市丸岡図書館での整理作業は、適切な保存袋保存函などに収納する作業はまだ途中である。これに目途がつき次第所蔵リスト作成に取掛りたい。 日記研究は、昭和38、39、40年、3年分の刊行をめざしており、選定した注立て項目に注を付ける作業にはやく着手したい。 上記の原稿、書簡、日記などの他に、ご遺族が保管していた雑多なものであると同時に重要なものが含まれていると思われる多くの資料がある。それは、草稿、メモ、手帳、政治資料、ゲラ(書き込みのあるものあり)新聞(書き込みのあるものあり)、切り抜き、雑誌、寄贈された論文・抜刷りといったものである。これらは整理、リスト作成を行ったのち、研究に資するものとするために、然るべき文学館・資料館に寄贈されなければならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の科研費交付金1,100,000より、4,476円が未使用となったのは、端数のためきりよく使用できなかったためであり、これを次年度繰越額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、1,200,000円申請しているが、28年度の繰越額4,476円は物品費に繰り入れる予定である。
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