本研究は、中野重治の肉筆原稿、書簡、日記等の調査と研究である。加えて最近困難な状況にある文学館との協力の社会的意義の追求も目的である。中野重治は、戦後の文学と政治を生きた稀有な文学者であった。本研究における中野重治の戦後日記の翻字を含む第一次資料の整理と調査は、日本の戦後史を文学の言葉で照射するという近代文学研究上貴重な研究となる。中野重治の第一次資料の大方は次の4館が所蔵している。石川近代文学館(肉筆原稿等)神奈川近代文学館(書簡・日記等)日本近代文学館(原稿、遺品等)中野重治文庫記念坂井市丸岡図書館(書簡・肉筆原稿・遺品等)。本研究が主に調査研究を行う石川近代文学館と中野重治文庫において、前者は肉筆原稿の公開のための作業と目録の刊行、後者は書簡・肉筆原稿の整理、所蔵目録作成である。中野重治の日記については、昭和38、39、40年分の全頁撮影とPCによる入力、本文点検、注作成等の作業を進行させた。 平成29年度は、27、28年度に続き、中野重治文庫所蔵の書簡・肉筆原稿の整理作業、石川近代文学館での、肉筆原稿公開のための作業を行った。中野重治文庫では、28年度から29年度にかけて、中野家に伝えられた古文書類を含む345点の「中野家文書類」という資料の整理を行ったが、29年度も続いて行い終了した。上の文学館の作業と並行して日記の研究を行った。日記は昭和40年から始めて38、39年と進めた。所蔵する神奈川近代文学館の協力を得て、作業は研究協力者四名と中野重治ご遺族にも協力頂き、本文起しと点検、注立て項目の選定を行い、過去二年で38年(4月まで)、40年の作業が終了した。29年度は、注立て項目の選定を後回しにして残りの本文起しと点検を先行させ、38年後半と39年5月まで本文起しと点検を半年分を残し終了した。全頁撮影とアルバイトによるPC入力作業は、29年度で全3年分が終了した。
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