研究課題/領域番号 |
15K02274
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
十重田 裕一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40237053)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本近代文学 / 言論統制 / 検閲 / 占領期 / メディア / 改造社 / 横光利一 |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀前期の日本近代文学を対象に、出版社・新聞社などマス・メディアによる検閲の歴史的な特色を、第二次世界大戦前から戦中にかけて実施されていた内務省の検閲と戦後占領期日本のGHQ/SCAP検閲を比較・検討しながら解明し、その成果を国際的に共有するべく、日本国内外で積極的に発信していくことを目的としている。本年度は、コロンビア大学客員研究員としてニューヨークに滞在時にプランゲ文庫における2度の調査(2016年1、3月)をそれぞれ行い、以下の論文・書評などの研究成果を発表した。 (1)「二〇一四年秋、パリ、国際シンポジウム」『日本近代文学』第92号、日本近代文学会、pp.153-158、2015年5月、(2)「せめぎ合う占領期事前検閲と改造社文芸出版―一九四五-四六年・横光利一『旅愁』を中心に」『日本文学』第749号、日本文学協会、pp.54-64、2015年11月、(3)韓国語版「植民地を描いた小説と日本における二つの検閲――横光利一『上海』をめぐる言論統制と創作の葛藤」紅野謙介他編『帝国の検閲――文化の統制と再生産』プルン歴史社、pp.147-177、2016年2月、(4)「書評・日高昭二著『占領空間のなかの文学―痕跡・寓意・差異』」『神奈川大学評論』第80号、p.156、2015年3月。他にも、講演「せめぎあう占領期日本の検閲と文学」(2015年11月14日、New Perspectives on Early Postwar Japanese Culture, The University of Chicago)を行うなど、研究成果の発表につとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、メリーランド大学図書館・プランゲ文庫における研究調査も順調に進み、当該研究に関する論文3点、書評1を発表した。加えて、シカゴ大学で研究成果に基づく講演を行った。年度の前半はカリフォルニア大学ロサンゼルス校で客員教授を、後半はコロンビア大学客員研究員をそれぞれつとめながら研究を進め、研究の国際的展開をはかった。コロンビア大学に滞在中には、同大学博士課程の学生たちを中心とするワークショップを行い、研究の方法と意義についてレクチャーした。なお、本研究の成果に基づく対談を、ロバート キャンベル・東京大学教授と行い(FM東京、2015年8月31日)、朝日新聞・読売新聞などで取り上げられ、研究成果の社会的還元にもつとめた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も昨年と同様、内務省とGHQ/SCAPの検閲にかかわる資料を日本国内外において収集・整理すると同時に、積極的に研究発表を行う。日本国内において図書館や文学館での調査をすると同時に、アメリカ合衆国メリーランド大学図書館プランゲ文庫での調査をすることが研究推進の方策となる。国内での調査では内務省検閲関係資料を、海外ではGHQ/SCAP関係資料を収集し、各分野の識者に意見をもとめながら、国内外において研究成果の報告をする予定。そして、プランゲ文庫における調査によって得られた資料と知見に基づきながら研究論文等を執筆する計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた出張費および人件費・謝金が、招聘先から支給、あるいは他の研究費から支出されたことで、次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、昨年度使用しなかった出張費および人件費・謝金を有効に活用しながら、海外での研究活動を行っていく予定である。
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