研究実績の概要 |
本研究は、20世紀前期日本近代文学における内務省・GHQ検閲の比較研究の国際的展開を目指し、当初の研究目的を達成することができた。2018年度は、これまでの成果を踏まえ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校などに出張し、ゴードンW.プランゲ文庫の資料調査と研究成果のアウトリーチの検討を重ねながら研究を展開した。2018年度も、帝国日本で行われていた内務省の検閲と占領期日本で実施されたGHQ/SCAP(General Headquarters/Supreme Commander for the Allied Powers、連合国軍最高司令官総司令部)の2つの検閲に関する新資料を収集・整理し、新たな研究の国際的な基盤を形成した。関連する研究成果として、プリンストン大学・シカゴ大学・早稲田大学の研究者たちとの共同研究の成果、Atsuko Ueda, Michael K. Bourdaghs, Richi Sakakibara, Hirokazu Toeda, Literature among the Ruins, 1945-1955: Postwar Japanese Literary Criticism, Lexington Books, May 2018.を上梓し、論文 “From the God of Literature to War Criminal: The Media and the Shifting Image of Yokomitsu Riichi from Prewar and Wartime to the Postwar Era,”(pp.177-190)を寄稿した。また、2017年に刊行した共編著Atsuko Ueda, Michael Bourdaghs, Richi Sakakibara, Hirokazu Toeda, The Politics and Literature Debate in Postwar Japanese Criticism, 1945-52, Lexington Books, pp.1-322, March 2018.のペーパーバック版も出版された。この二冊は、国際的波及効果を持つと考えられる研究成果である。さらに、2018年1月に開催した国際検閲ワークショップの成果をまとめ、尾崎名津子・金ヨンロンとの共編著『言論統制(仮)』(花鳥社)を2019年度中に刊行する予定である。
|