研究課題/領域番号 |
15K02276
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
安田 文吉 東海学園大学, 人文学部, 教授 (80121474)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 名古屋芝居 / 地芝居 / 名古屋芝居年表 / 番付 / 地芝居台本 / 地役者 / 女芝居 / 尾陽戯場事始 |
研究実績の概要 |
本研究は「名古屋芝居年表 近世編」を作成して、地方歌舞伎最大の拠点であった名古屋芝居の再評価を目的としているので、本年度も名古屋芝居の番付や記録類を調査し、写真撮影によって収集した。具体的には、昨年度のホノルル美術館のリチャードレーンコレクションの調査の補充を行った他、垂井・長浜・中津川・瑞浪・新城の地芝居団体或いは個人の保管する台本、記録類の調査を行った。また、名古屋、伊勢、上方の番付類については、古書店からの購入によって収集した。 初年度は纏まった記録類や公共機関に所蔵されている番付類の複写資料の整理を行い、年表フォーマットに書き込んだので、28年度は27年度及び28年度に収集した、名古屋及び周辺地域と上方芝居の芝居資料を整理し、これらも年表フォーマットに書き込んだ。これによって、名古屋周辺では、歌舞伎の発生直後から、出雲阿国や女歌舞妓、若衆歌舞妓が行われたこと、加えて、尾張藩主の保護下で寬文4年(1664)11月には常設の芝居場所が作られて、上方や江戸の役者の歌舞伎、浄瑠璃の興行が行われたこと、さらに寬文年間(1661~70)には名古屋在地の役者一座が活動していたこと、等が確認できた。名古屋芝居は、伊勢歌舞伎と共に、地方歌舞伎としては全国でも最も早い発生であったし、すでに初期から地方芝居の拠点として、機能していたことも見えてきた。 名古屋は尾張藩の城下町であるが、尾張藩は歴代藩主が芸能好きであったこと、江戸幕府からの独立心が高かったことから、地方では芝居の禁止令が出されたり、厳しい取り締まりが行われたが、尾張藩内では、むしろ保護・奨励されることが多かったようで、東西の役者や興行師、在地の役者の活動も活発であった。原則禁止されていた女芝居の活動の痕跡が多いのも特徴である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、小豆島の土庄町と池田町から28~30年度までの3年間で、文化庁の記録すべき文化財の指定を受けた「小豆島歌舞伎記録」作成委員の依頼を受けたので、こちらの調査にも時間を割かねばならなかったが、地方芝居という共通の調査内容であるので、相互に比較したり、補完したりすることもでき、研究にはかえって有効であった。また、資料は既にかなり収集してあること、研究者の拠点の周辺に多くの資料があること、資料をネット公開している所が増えたことなどで、纏まった時間を確保しなくとも、作業を少しずつ進めることができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
地方芝居に関する資料のうち、番付、台本と言った資料は、何時、何処から出現するかは、全く予測がつかないので、資料の全貌を予想することは無理で有るが、現在までに存在が知られている資料は概ね収集した。29年度は最終年度であるので、収集した資料を整理し、芝居年表フォーマットに書き込んで、現状での「名古屋芝居年表」を纏めたい。 勿論、新資料の情報は見逃さないようにし、さらに、精度の高い「芝居年表」を目指したい。また、個人や保存会蔵の資料については、散逸を阻止し、保存にはできるだけ協力するようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に繰り越した使用額は1,188円で、小額である。購入した物品の価額の関係で端数が残ったものである。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した次年度使用額は小額で、使用計画を変更するほどの金額ではない。資料保存用のDVD又はUSBを購入する費用としたい。
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