本年度は3年間の最終年度であるが、猶、未収集資料の発掘と収集に努め、名古屋芝居及び周辺地域の番付類及び芝居興行記録、関連する上方及び江戸の芝居資料を古書店からの購入、写真複写によって収集した。この収集資料からは、名古屋芝居においては、女芝居、女浄瑠璃など女芸人の活動が活発であったことが知られた。 本研究は、名古屋及びその周辺に地域の芝居(歌舞伎及び人形芝居)の江戸期に於ける実態を明らかにすべく、既存の資料を再検討し、未整理・未発掘の資料をできるだけ発掘・収集・整理して、年表の形で提示することを目的としていた。未発掘の資料が何処にどれほどあるかはを知ることは不可能であるので、本課題の研究を開始する以前から、収集していた資料、27、28年度に収集した資料、上記の本年度資料を整理して、年表フォーマットに書き込み、現時点での「名古屋芝居年表 近世編」を作成し、東海学園大学図書館のHPにおいて、提示することとした。 ここから見えてきた「名古屋とその周辺の芝居」状況は、名古屋はその距離的な位置から見ても、上方、特に京都の芝居との関わりが密接であったことが読み取れる。一方で、江戸から距離があること、尾張藩という大藩の支配下にあったことから、江戸幕府の体制から独立した意識もあり、芸能の繁栄を歓迎する自由な雰囲気があって、独自の芝居文化を形成してきたことが見えてきた。また、地方文化の拠点として、周辺の地域を巻き込みつつ、都市の芸能である歌舞伎の、地方伝播の拠点としても機能していた。 本年度で本課題研究は一応終了するが、今後もさらに、資料発掘は進めるので、年表は随時更新して、より充実したものにしていきたいと考えている。
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