研究課題
2017年度は①インパール作戦と火野葦平、②河童伝説と火野葦平文学について研究をすすめた。以下、今年度の研究状況について具体的に記す。①インパール作戦と火野葦平に関しては、2017年9月にルーマニア・ブカレストで開催された国際シンポジウムで、火野のインパール作戦『従軍手帖』の詳細と、作品『青春と泥濘』について基調講演を行った。その後討議をし、活発な意見交換をすることができた。この国際シンポジウムでは、ローマ大学在職の、戦争文学研究者とお会いすることができ、交流を深め、知見が広がった。大変よい機会を得たと考えられる。また、『火野葦平インパール作戦従軍記』(2017年、集英社)の「解説」「解題」「年譜」を担当し、火野のインパール作戦についての全貌を知ることができた。そのうえで、関西大学東西学術研究所で開催された研究例会で、インパール作戦時に、動員された現地の原住民を描いた「異民族」という作品と、火野のインパール作戦『従軍手帖』との関連や、作品のテーマに関する研究発表をおこなった。②河童伝説と火野葦平文学については、主に、北九州市門司区に言い伝えられた河童伝説である海御前伝説と火野文学との関係について研究をすすめた。平家方が壇ノ浦で入水自殺をはかった後、実在する平教経の妻は、北九州市門司区大積海岸に流れ着き、河童となって大積天疫神社に祀られ、海御前と呼ばれた。これが、海御前伝説である。火野はこの伝説をもとに、河童小説「白い旗」、「海御前」などを描いている。2017年度はこの二作について、詳細に研究を行った。大積天疫神社、大積海岸などを訪れ、海御前の碑を探索しフィールドワークをすることができた。以上、火野葦平の文学について、多様な観点で研究を推進でき充実していた。
2: おおむね順調に進展している
『火野葦平インパール作戦従軍記』(2017年、集英社)の刊行に尽力することができ、火野葦平文学の国際的発展に貢献できた。さらには、火野文学の論文執筆、講演、研究発表を行い、討議もすすみ、研究を推進することができたため。
今後の研究の推進方法としては、火野葦平の自筆資料が多く保管されている、北九州市立文学館、ならびに、火野葦平資料館、河伯洞と連携をとりながら、火野の自筆資料についての研究をすすめ、火野文学の研究を遂行する。
2017年度に参加したルーマニアでの国際シンポジウムの旅費は、科研費と別の団体からの助成金を受けたため、次年度使用額が生じた。なお、2018年8月にモンゴルで実施される国際シンポジウムの参加旅費として使用する計画である。さらに、北九州市文学館、国立国会図書館などに出張し、火野葦平の戦争文学や、河童資料を集めるための出張旅費に使用する。
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関西大学文学論集
巻: 第67巻4号 ページ: 47~77
関西大学『国文学』
巻: 102号 ページ: 303~313
ANNALS OF “DIMITRIE CANTEMIR” CHRISTIAN UNIVERSITY LINGUISTICS, LITERATURE AND METHODOLOGY OF TEACHING
巻: VOLUME XVII No.1 ページ: 33~42