本研究は、明治大正昭和と継続し目録を発行し続けた古書肆鹿田松雲堂を中心に据え、幕末期からの人的交流、すなわち蔵書家たちとの書物をめぐるやりとりなどを日誌・書簡・発行目録・手控え書類といった基礎資料に基づき考察しようとするものである。また、こうした会の運営に関する具体的な実施例での比較考察を図るために、結社による人的交流資料である遠藤千胤旧蔵邦光社関係資料を中心に調査を実施し、関係写本の翻刻等、実態の解明につとめた。 鹿田松雲堂関係資料(具体的には鹿田三代余霞による「日誌」や、文人や愛書家たちとの古書交換会関係資料)など、研究にあたっての基盤資料の撮影の実施と周辺資料調査を平成27年度に実施し、鹿田三代余霞による日誌類については撮影後、期間内継続してその翻刻作業・点検を実施した。日誌についてはほぼ翻刻を完了し、現在、その刊行に向けて準備中にある。人的交流に関する研究論文については、単著のなかに掲載し研究成果の公表を果たした。 申請時と異なり、個人所蔵から公的機関へと鹿田松雲堂関連旧蔵資料の移管が行われたが、その受け入れにあたって目録(リスト)化を実施することなどを公的機関と調整した。これは当初目標とした相互の情報から浮かび上がる古典籍を巡る人的交流の諸相を明らかにする基盤整備にあたる。平成29年度末段階で全ての函を開け、30年度末でデータ採録をほぼ終了しえた。その間、紙縒りで書簡や書類等が綴られたものなどを封書に入れるなどの整理をし、葉書等1点と数えると総点数1400点を超えるデータとなった(エクセルデータとして作成)。データの最終点検、校正が未了ではあるが、こうしたデータと日誌を併せた形での公開も検討している。期間内に公表を果たすことはできなかったがほぼ順調に目標を達成しえた。
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