研究課題/領域番号 |
15K02288
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
笹川 渉 北見工業大学, 工学部, 准教授 (10552317)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イギリス文学 / イギリス詩 / スチュアート朝 / 内乱 / 祝祭 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究成果は以下の2点である。1点目は研究計画でテーマとした「内乱期におけるキリスト表象」に関わる一次資料および二次資料の収集と読解を行い、内乱期以前と王政復古の間におけるキリストの表象に国王が重ねられた文献の読解を進めたことである。例えば、1655年に出版されたDaniel Cudmoreのキリストの誕生と受難を題材にとった詩集Euchodiaは、聖書の一節を引用しながらそのテーマについての詩が続くという体裁をとっているが、内乱を意識していることは明らかな描写を見ることができる。上記以外の一次資料を読解する上で、国王不在の内乱期におけるキリスト生誕への言及は、国王を直接言及することなく国王再臨を待望することを表明した国王支持者たちのレトリックであることを確認した。 2点目としては、研究計画では平成28年度に計画していたランターズと民衆の祝祭に関する文献の読解を始めたことである。内乱期の匿名のパンフレット “The arraignment and tryall with a declaration of the Ranters” (1650)や、1660年の匿名のパンフレット、 “Englands joy in a lawful triumph.” (1660) 、さらには Nigel Smith, ed., A Collection of Ranter Writings (2014) 等で「ランターズ」と民衆の祝祭に関する一次資料の読解を始めたことである。Norman Cornsが指摘してきたように、地上への楽園の到来を待望したランターズたちは、王党派から敬遠された一団であるが、1650年代の急進的な一団は王党派的な色彩を帯びた民衆の祝祭と動きを共にしていた傾向が垣間見られることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では当該年度に大英図書館とボドレアン図書館での手稿本の調査を行うことと、学会発表での報告を行うことを挙げていたが、研究代表者の研究所属機関の異動等の事由により国内での資料採取と文献の読解が中心となった。そのため、本来参照するはずであった大英図書館のAdd MS 30982やボドレアン図書館MS Don b.8等の文献に当たることができず、当初計画していた論文執筆についても遂行することができなかったためにやや遅れが出た。しかしその分、翌年度の研究計画の内容に着手することで、平成28年度での研究計画に支障をきたさないようにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間2年目となる平成28年度は、前年度に実行できなかった国外図書館での資料採取を研究代表者の夏期休業期間内に行い、また国内での資料採取を進めていく。当該年度に行った内乱期における国王支持者のキリスト表象の調査を深化させ、平成28年度に行うランターズと民衆の祝祭の関係を追究し、内乱期と共和制下における民衆の祝祭という観点から論じていく予定である。前年度に遂行できなかった学会発表は、平成28年度に決まっている口頭発表にて報告を行い、論文執筆についても研究成果をまとめられるように進めていく予定である。それにより研究期間最終年度となる平成29年度での最終的なまとめを計画通り遂行できるよう心がける。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては国外での資料採取を行うことができなかったため、国外旅費として申請をしていた分を使用することがなかった。国外旅費として計上していた分のおよそ半額を物品費(図書)としてその半額を使用し十分な資料の確保に努めた。
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次年度使用額の使用計画 |
残額は平成28年度及び平成29年度のための国外での調査を行う際に、より十分な期間を確保するために使用する。円安が続いているために当初通りの計画期間となる可能性があるが、より充実した計画の遂行ができるように滞在費に当てることを計画している。
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