研究課題/領域番号 |
15K02290
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 美津子 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (60073318)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウィリアム・ジョーンズ / ロマン主義時代の英国小説 / エドマンド・バーク / ウォレン・ヘースティング ズ / 帝国主義 / シドニー・オーエンソン / エリザベス・ハミルトン / 植民地支配 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第一に、従来あまり論じられることのなかったPhebe Gibbes、Sydney Owenson、Elizabeth Hamilton、Sir Walter Scott、 Elizabeth Inchbaldなどの、植民地支配下にあるインド亜大陸を舞台にした小説や戯曲、いわゆる「インド物語」(Indian Tale)を取り上げ、 その作品をロマン主義時代の文化的、政治的、宗教的文脈の中に位置づけ、個々の作品に見られるインド表象がいかなるものかを検証することである。次に、作家の宗教意識、政治意識、民族意識などを、オリエント学者Sir William Jones、保守の論客Edmund Burke、歴史家Robert Ormeなどの著作やWilliam Hodgesの旅行記などの一時資料を援用しながら、ポストコロニアリズム、フェミニズム、 新歴史主義などの観点から分析する。そうすることによって、各作品に見られるインド表象が何に起因するのかを明らかにする。 今年度は論文2篇を執筆し、学会発表を1回おこなった。「偽装と隠蔽、混乱と錯綜─『フロレンス・マカーシー』に見られるアイルランド表象」においては、インドと同様イギリスの植民地支配下にあるアイルランドがいかなる文学戦略を用いて 表象されているのか、その政治的意図は何かを明らかにすることを試みた。「フィービ・ギブズの『カルカッタのハートリー館』とへースティングズ弾劾裁判」においては、へースティングズ弾劾裁判が作品中にいかに反映されているのかを検証し、作品中のインド表象を手がかりに作品に潜む政治的な意図を探った。学会発表は、「マライア・エッジワースの『足の不自由なジャーヴァス』におけるインド表象」という題でおこない、エッジワースの政治信条と照らし合わせながら、作品中でインドがどのように表象されているのかを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献収集に関しては,おおむね順調に進んでいる。論文の執筆もほぼ予定通りに進んでおり、来年度はさらなる構想のもと、インドを舞台にした作品を多数を出版しているMary Martha Sherwoodの小説群に関する文献収集にも取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度とほぼ同じ手順で行う予定である。(1)本研究課題に密接に関わる作品を大英図書館、ケンブリッジ大学図書館、オックスフォード大学図書館等から、マイクロ・フィルムや可能であればフォトー・コピーの形で取り寄せる。(2)取り寄せたマイクロフィルムは現像し、製本して読みやすい形態にする(3)製本した作品を精読し、分析結果をカードに記載し、必要に応じてデータをパソコンに打ち込む。資料などの整理は院生に委託する場合もある。(4)「インドの物語」の特色を明確化するためにロマン主義時代に刊行された旅行記、論評などを多数入手し、精読し分析する。(5)最終的には、4年間で得た知見を何らかの形で公開したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴って発生した未使用額であり、平成30年度請求額と合わせて次年度に計画 している研究の遂行に使用する予定である。
(使用計画) 今年度発生した未使用額と平成30年度請求額は、大英図書館に資料収集に出かけたり、研究打ち合わせ、学会出席、文献収集、文献複写に使用する予定である。
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