本研究は、初期近代に再受容された原子論が、「科学」思想に与えた影響だけでなく、ユートピア言説に与えた影響について学際的に考察した。原子論により「科学」は神の創造という枠組から脱し、物質としての万物を扱う学問分野となり始める。同時期、ユートピア思想も、道徳的な教訓物語から脱し、構成員である人間とそれを取り巻く社会の物質性を考察する具体的な共同体思想となり、再構成され始める。本研究では、このような科学とユートピア言説の転換期における両者の関係性を検討することで、近代における科学、国家、主体の関係性の構築過程を明らかにした。
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