本研究では、主に対人的な場面で使われると考えられがちな「敬意」や「丁寧さ」の表現が、不特定多数に向けた書き言葉でも潜在的に機能し、とくに小説や詩などの語りの中で語りの装置として大きな役割を果たしていること、またテクストと読者の間に興味深い作用を及ぼしていることを明らかにした。このことによって、文学テクストもまた何らかの目的を持ち、また結果をも引き起こす一種の「行為」だということが確認され、かつ、その「行為」が読者やときには登場人物に対する「配慮」を伴うきわめて人間関係的なものとして遂行されていることも検証された。
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