研究課題/領域番号 |
15K02303
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
野谷 啓二 神戸大学, その他の研究科, 教授 (80164698)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ベロック / 反近代主義 / カトリシズム |
研究実績の概要 |
20世紀イングランドにおけるカトリック知的復興現象の担い手は宗教改革の荒波を生き抜いてきたレキュザントでも、19世紀半ば以降、貧困を逃れ、工業国イギリスの安価な労働力として流入したアイルランド移民でもなく、多くはイングランド国教会からの改宗者であった。カトリック知識人の生みの親とも言うべき人物は、ヒレア・ベロック(Hilaire Belloc, 1870-1953)であると言っても過言ではない。宗教改革以来、国是であったプロテスタンティズムの圧迫下、ロマン主義による中世主義的関心の増大によって勇気づけられる局面もあったが、依然として劣等意識に苦しめられていたカトリック信者は、第一次世界大戦前後にジャーナリズムで活躍したいわゆる「チェスタベロック」の二人によって、ようやく知的世界によって認知されるようになったのである。ベロックは盟友チェスタトンに与えた影響もさることながら、ヴィンセント・マクナブ、エリック・ギルら、教皇レオ13世の社会教説に従う運動を展開した人々に支持され、のちの小説家ウォー、歴史家のドーソンに引き継がれていく思想状況を作り上げた。 ベロックはカトリック教会の信仰に基づき反近代主義の立場、少なくとも近代の諸課題を中世の価値に依拠して批判する姿勢を見せた。そのイデオロギーは①反議会制民主主義(君主制、しかし必ずしも血統によるものではない)、②反資本主義(私有財産分配主義Distributism)、そして③近代イングランドの「栄光」をプロテスタンティズムに求める、いわゆる「ホイッグ史観」を粉砕しようとする歴史観で構成される。ベロックの思想は今日ただの反動的な「ファシスト」とみなされ無視されている状況であるが、預言者的相貌を持って語られる彼の小説、批評、歴史に見られる直観的認識は、今日にも重要な視座を提供してくれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属大学における学部再編事業に評議員として積極的にかかわる必要があったため、予定していた海外出張を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
評議員の任期が終わったため、本来の研究ペースに戻ることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に従い、海外出張を行い資料を調査する予定であったが、所属大学における学部再編事案に評議員として積極的にかかわる必要が生じ、出張を行うことができなくなったことが最大の理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は評議員の任期が終了しており、当初の予定通り、出張が可能と考えている。また、関連する研究発表が6月にイタリアで行うことが決定しており、この旅費についても補助金を使用する計画である
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