研究課題/領域番号 |
15K02307
|
研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
エグリントン みか 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50632410)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | シェイクスピア / アジア / ヨーロッパ / 日本 / 21世紀 / 上演研究 / 舞台芸術 / 演劇 |
研究実績の概要 |
平成27年度は雑誌論文15本と図書3本の業績を挙げた。その筆頭として、大胆なシェイクスピア翻案で知られる野田秀樹氏についてのエッセイと、英国における"Japanese Shakespeare"のアイコンである蜷川幸夫氏とのインタビュー掲載された"A History of Japanese Theatre" が、平成28年8月にCambridge University Pressから出版予定である。 野田秀樹氏が翻案し、静岡舞台芸術センター(SPAC)の宮城聰氏が演出し、私が英訳を担当した『真夏の夜の夢』と3.11後の日本の社会的状況と演劇表象の関係性を分析した英語論文"After Fukushima: A Midsummer Night’s Dream at SPAC in 2011 and 2014"を、平成27年夏に青森美術館で行われた日本初開催のPSi学会(Performance Studies international)2015: FLUID STATES, Performance of Unknowingで発表した。この成果をまとめた'“Thou art translated”: Remapping Hideki Noda and Satoshi Miyagi’s A Midsummer Night’s Dream in Post- March 11 Japan’が、査読付き学術雑誌”Multicultural Shakespeare: Translation, Appropriation and Performance” (Lodz University Press) に受理され、平成28年中に出版予定である。 中屋敷法仁主宰の劇団・柿喰う客が上演した三悲劇『悩殺ハムレット』、『絶頂マクベス』、『失禁リア王』に取材した「撹乱的女性身体 柿喰う客『女体シェイクスピア』試論」が、平成28年度中に春秋社より出版される予定である。 上記の業績に加え、学術雑誌"Shakespeare Studies"、英字新聞"The Japan Times"、演劇雑誌『シアターガイド』、SPACの公演プログラム『芸術文化』などの媒体に日本語と英語で劇評を寄稿した。合わせて、二つの美術展カタログにおいて3本の翻訳を掲載出版した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究業績の概要に平成27年度の成果に見るように、21世紀、特に2011年の3.11以降の日本のシェイクスピア上演を追求する「Japanese Shakespeare New Millenium」の研究は、当初の計画通り、おおむね順調に進んでいる。 今年度は大学業務が多忙だったゆえに、予定していた夏季・春季休暇中の海外リサーチが行えなかったが、その代わりに国内出張を増やし、日本国内の劇場と演劇祭におけるリサーチに比重を置いた。
|
今後の研究の推進方策 |
ヨーロッパ、ひいてはイングランドの植民地主義の歴史とイデオロギーが刻まれたシェイクスピア最後の劇とされる『テンペスト』を、舞台と映像における表象と絡めて読み直した依頼論文「野蛮なる新世界:『テンペスト』という帝国の言語、言語の帝国」を現在執筆中であり、平成28年度中に大阪教育図書から出版される『言葉という謎』に掲載される予定である。 平成28年7月末からストラットフォードとロンドンで行われる国際学会the 10th World Shakespeare Congressに出席し、"‘Japanese Shakespeare’ and the Construction of the Nation State"をセミナー"Transcultural Shakespeare: Translation, Performance and Adaptation"にて発表する予定である。その後ロンドンの劇場、アーカイヴ、図書館にて資料収集とリサーチを行う。 まだ確定ではないが、12月にはインドのニューデリーにて開かれるAsian Shakespeare Association Biennial Conferenceにて、"The Japan Times"でも取り上げた、木村龍之介率いる若手劇団カクシンハンについての英語発表を行い、またインドのシェイクスピアに関する見識を深める予定である。 国内外における自分の研究に加えて、Asian Shakespeeare Intercultural Archive、アジア女性舞台芸術コレクティブ、芸術公社・Scene/Asiaというアジアの舞台芸術に関する3つのプロジェクトのメンバーとして、アジア各国でフィールドワークを行いながら、「アジア」、「日本」、「ヨーロッパ」といった言説と表象を分析しながら、翻訳・執筆活動を行う。これらの3プロジェクトの持つ媒体に加えて、"The Japan Time"などにも引き続き劇評を寄稿し、常に変化し続ける演劇動向に伴走しながら研究活動を行い、日英語で論文を発表していく予定である。
|