研究課題/領域番号 |
15K02311
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
辺見 葉子 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 教授 (40245428)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | J.R.R. トールキン / English and Welsh / O'Donnell Lecture |
研究実績の概要 |
2016年度は、Tolkienの"English and Welsh"研究の一環として、まず5月11日~16日に、アメリカ、カラマズーで開催された国際中世学会で13日"Tolkien’s Concept of ‘Native Language’ and the ‘English and Welsh’ Papers at the Bodleian Library"と題した口頭研究発表を行った。このペーパーは、2016年3月にオックスフォード大学ボードリアン図書館でのアーカイブ調査で発見したO'Donnell Lecture Seriesに関する文書に基づき、"English and Welsh"の出版に至る過程の究明の鍵となる発見に関する報告である。 学会ではまたTolkien関係のセッションにすべて参加し、英米の研究者たちとの情報交換・交流が実りあるものとなった。特に、この学会直前に刊行となった"A Secret Vice"(Tolkienの学術的講演の手稿原稿調査を含め解説を付けたextended edition)の第二弾として、私が研究をしてきた"English and Welsh"も早期出版するようにと激励を受けた。 8月9日~23日のボードリアン図書館調査では、したがってアーカイブ文書の再精査、"English and Welsh"の手稿原稿の未解読部分の解読作業を行った。滞在期間も終わる頃に、Tolkienの学部生用の講義ノートとその文献目録の存在を知り、この調査は春に持ち越すこととなった。 2017年2月27日~3月7日のボードリアン図書館調査では、したがってこの講義ノートのトランスクリプトをメインとした調査を行った。Tolkienの「先史」観の解明には直接結びつかないながらも特に参考文献リストは有用な発見であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
English and Welshの手稿原稿のトランスクリプトがまだ完成しないこと(極めて読み取りが困難な箇所の進展が思うように得られないこと)が一番のネックとなっているが、新資料の発見でその調査にも着手したため、決して後退したわけではないが、本研究課題の「トールキンの先史観」そのものについての進捗状況としては、やや滞っているため。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度には、アメリカで開催されるトールキン・シンポジウムでの口頭発表の後、ボードリアン図書館での調査を引き続き行い、まずは"English and Welsh"の手稿原稿のトランスクリプトの完成に努め、併せて解説には本研究課題である、「トールキンの先史観」も含める予定であるので、講義の参考文献として上げられた書籍の他、手稿原稿で言及されている、トールキン自身が参照した文献の分析も行う予定である。
また、"English and Welsh"とは離れるが、別方向からの「トールキンの先史観」解明へのアプローチとして、ジョン・フリースらケルト研究者によって提唱された、妖精(エルフ)を先史民族と重ね合わせる言説について、10月に私が開催する日本ケルト学会大会でのシンポジウムで発表を行う予定である。
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