研究課題/領域番号 |
15K02313
|
研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
島崎 里子 昭和女子大学, 文学研究科, 准教授 (90276618)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 古英語 / 女性 / Aelfric / married saints / 写本 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、まず、前年度までに作成したAelfricのvirgin spouses作品群の電子テクスト(「Aelfricのmarried saints作品群をめぐって--Diplomatic Texts of Aelfric's Lives of Married Saints, Trial Version--」『昭和女子大学女性文化研究所紀要』第43号(2016)1-25に掲載)について、原写本(MS Cotton Julius E. Vii)との照合・点検作業を行った。また、編纂上で生じた様々な疑問点や問題点を再度検討し、diplomaticテクストの確定作業を行った。 次に、Aelfricがこれらの作品群を執筆する際に参照した可能性が最も高いとされるラテン語のテクスト(Latin MS 13764)を、上記の古英語テクストの対応箇所と並行して配置し、両者を一覧して比較対照することが可能な電子版parallel textの作成を行った。 更に、ここで作成したテクスト、およびラテン語原典とAelfricの古英語作品を(その中から特にChrysanthus and Dariaを取り上げて)比較し、主にnarrative methodに着目して両者の相違を調査した。 また、その結果を、論文「Aelfricの既婚聖人伝に見る女性像--Chrysanthus and Dariaをめぐって」にまとめ、『昭和女子大学女性文化研究所紀要』第44号(2017)1-21に掲載した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に作成したAelfricのmarried satins作品群の古英語版テクストについて、平成28年度は、その原典とされるラテン語版のテクストを、古英語版の対象箇所に並行して配置し、両者を一覧して比較対照することが可能となるparallel textの作成に取り組み、作業をおおむね完了した。その成果を大学紀要に掲載すると共に、機関リポジトリーを通じて学外へ公開した。
|
今後の研究の推進方策 |
Aelfricがmarried saints作品群を執筆する際に参照したとされる文献は、ラテン語原典の他に、Aldhelmおよび作者不詳の古英語聖人伝が考えられる。これらの文献についても、これまでと同様の方法で電子テクストを作成し、古英語版との比較対照を可能にする。 更に、これらのテクストを利用して、古英語期の英国に伝播したmarried saints聖人伝における女性像の受容と変容の系譜をたどり、Aelfricの女性像の特徴について論じる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に、古英語テクストとラテン語原典とを並行して配置したparallel textの編纂作業を行ったが、作業の途中で生じたさまざまな疑問点や問題点を検証するために、再度、英国図書館での写本調査が必要であることが判明した為、予算の一部を次年度に繰り越し、旅費を確保した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に写本調査の為の英国出張を計画している。この間に、国内では入手困難な文献等も集中的に収集する予定である。
|