研究実績の概要 |
本年度は、ハーバーマスの公共圏概念を再検討すること研究をスタートさせた。その際の主たる問題は、女性がこの文化圏にどのように参加してきたのかを明らかにすることであった。文化の商品化について考える際にも、消費者としての女性の役割、そして消費の対象としての女性の役割を見逃すことはできないからである。 まず、女性の欲望、想像力、快楽、美徳をめぐる様々な言説を対象に、公共圏における近代的主体の歴史性について、ジェンダーの観点から検討を進めてきた。「展示され、消費されることを欲望する女性」を作り出す、と同時に制御することを目指す18世紀公共圏文化の複雑な力関係を解明するために、都市生活の消費問題を中心に検討した。具体的には、New WardのThe London Spy、Tom BrownのAmusements, Serious and Comical、The Town Spy: or, A View of London and Westminster、T. LeggのLow-Life、Richard KingのThe Frauds of London Detected等を精査した。次に、Bartholomew Fair等の市やそこで催されるさまざまな出し物(演劇や演奏会等)の表象を通して、女性がどのように消費と関係してきたのかを分析した。具体的には、Bartholomew Fair: An Heroi-Comical Poem、A Pacquet from Will's、The Pigs Petition against Bartholomew-Fair等を検討した。
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