本研究では、王政復古期演劇が、王位継承排除危機と名誉革命という政体の危機の表象を通じて、どのように新たな表現のためのヴォキャブラリーやパターンを生み出し、18世紀演劇へと連なる新たなジャンルを生み出したかを考察した。従来も、政治的危機と演劇との関連を論じた研究はあったが、それらは王位継承排除危機に特化し、演劇をトーリーもしくはホイッグのイデオロギーのプロパガンダとみなしがちであった。トーリーとホイッグとは、今日世界的な〈多様化〉と〈分断〉の潮流のなかで危機に陥っている二大政党制の起源であるが、本研究は、その原点に立ち返って、演劇が政治との対峙においてどのような役割を果たしたのかを考察した。
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