• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

18世紀における「真正のシェイクスピア」の創成とその本文編纂史への影響

研究課題

研究課題/領域番号 15K02318
研究機関東洋大学

研究代表者

五十嵐 博久  東洋大学, 食環境科学部, 教授 (20300634)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードシェイクスピア / 受容 / 変容 / 18世紀の受容 / 本文編纂
研究実績の概要

今年の業績としては、1)10月10日(土)に北海道教育大学函館校において開催された第54回シェイクスピア学会において「『ロミオとジュリエット』における宗教と裁判的思考」と題する研究発表を行った他、2)3月15日(火)にヴィクトリア大学(カナダ・BC州)の人文学部(Faculty of Humanities)主催の研究会において「The "Royal Play" of Macbeth Viewed from a Japanese Perspective」と題する研究発表行った。1)、2)ともにシェイクスピアの芝居が初演された当時の感覚に近い感覚でテクストを解釈する方法を確立し本文成立に関する一つの「スタンダード」な解釈を導くための考察である。「シェイクスピア」は18世紀以降の批評、上演、編纂のプロセスの中で創成されたイコンであるというのが今や学会で広く受け入れられている仮説である。したがって、その像(便宜上「虚像」と呼んでおく)が成立してゆく蔭で失われた「オリジナル」がどのようなものであったのかその可能性を探究することは、本研究を遂行してゆく上で重要となる。新歴史主義批評以降のシェイクスピア研究の中で確立されつつある、シェイクスピアの時代においてドラマのコミュニケーションが有していた意味・意義に関する近年の批評を参考に、18世紀以降の伝統的なシェイクスピア像からは欠落してしまったと考えられる部分を照射してゆくことが現段階ではまず必要という考えに基づいて上記の二つの論考を発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた18世紀の受容に関する研究について若干遅れている部分があるものの、おおむね順調である。当初の予定ではデイヴィッド・二コル・スミスの研究業績の精査を中心に「18世紀におけるシェイクスピア受容」の問題について私なりの考えを整理しようと考えていたが、少し予定を変更し、17世紀におけるシェイクスピアおよびその名が冠された作品集(通称ファースト・フォリオ、1623年刊)の成立を巡る問題について探究することとなった。具体的には、斯界においてフォリオの本文成立に関して最もスタンダードな書物と考えられるピーター・ブレーニー著『シェイクスピア・フォリオの成立(仮邦題)』(1991)の監訳作業をすすめながらこの問題に取り組んだ。18世紀(特に18世紀後期以降)の本文批評家達が典拠としてきたファースト・フォリオについてのより正確な理解が求められると判断したからである。この監訳本は、あくまでも本研究の副次的な生産物という位置づけではあるが、本研究の期間中に公表する予定である。
なお、今年度中に公表が予定されていた共著『シェイクスピアの諸相』(仮題)は現段階ですでに本文は完成しているが、編集と係る諸般の事情により刊行が遅れている。今年の5月には熊谷次紘・松浦雄二編『シェイクスピアの作品研究――戯曲と詩、音楽』(英宝社)という形で刊行される運びである。本書に「シェイクスピア劇における人物の行動規範と観客の共感の原理についての一考察」(pp. 203-34)という拙論が掲載される。
以上の他は、概ね順調に研究が進んでいる。

今後の研究の推進方策

平成28年度の夏季、二つの国際学会での研究発表(国際シェイクスピア学会8月初旬、英国シェイクスピア学会9月初旬)を予定していたが、本務校で入学試験業務と係る学内業務の委員に任ぜられたことから、後者の発表については断念せざるを得ない状況となった。また、二つの学会出張に合わせて一カ月間の予定でロンドンに滞在して調査研究を行う予定であったが、国際シェイクスピア学会の開催期間である1週間を含めて2週間の滞在とする。幸い、現在手許のパソコンでEEBOやECCO(初期近代及び18世紀文献調査のためのデータベース)が自由に使える状態であるので、研究に必要とする第一資料の多くはこのデータベースで読む、あるいは所在等を確認することはできる。断念せざるを得ない調査研究及び学会発表については平成29年に実施することとし、平成28年度の夏季期間の後半は、国内で可能な作業として上記したピーター・ブレーニー著『シェイクスピア・フォリオの成立(仮邦題)』(1991)の刊行に向けた作業に充てる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「シェイクスピアを読む」ことを巡る反省的回想録2015

    • 著者名/発表者名
      五十嵐博久
    • 雑誌名

      ことばと文字

      巻: 3 ページ: 167-173

  • [学会発表] The Collaboration of Scholars and Critics since the Late-Eighteenth Century in Forming Hamlet's Image2016

    • 著者名/発表者名
      Hirohisa Igarashi
    • 学会等名
      World Shakespeare Congress 2016
    • 発表場所
      バーミンガム大学/ロンドン大学(英国・ストラットフォード/ロンドン)
    • 年月日
      2016-07-31 – 2016-08-06
    • 国際学会
  • [学会発表] シェイクスピアの登場人物達の判断と行動の原理についての一考察-『ロミオとジュリエット』における法と宗教の問題を出発点として2016

    • 著者名/発表者名
      五十嵐博久
    • 学会等名
      関西シェイクスピア研究会(2016年4月例会)
    • 発表場所
      関西学院大学大阪梅田キャンパス(大阪府・大阪市)
    • 年月日
      2016-04-24
  • [学会発表] The Royal Play of Macbeth Viewed from a Japanese Perspective2016

    • 著者名/発表者名
      Hirohisa Igarashi
    • 学会等名
      Study Meeting for the Faculty of Humanities, University of Victoria
    • 発表場所
      ヴィクトリア大学(カナダ・BC州)
    • 年月日
      2016-03-15
  • [学会発表] 『ロミオとジュリエット』における宗教と裁判的思考2015

    • 著者名/発表者名
      五十嵐博久
    • 学会等名
      第54回シェイクスピア学会
    • 発表場所
      北海道教育大学函館校(北海道・函館市)
    • 年月日
      2015-10-10
  • [図書] シェイクスピアの作品研究―戯曲と詩、音楽2016

    • 著者名/発表者名
      熊谷次紘・松浦雄二編 (著者 熊谷次紘・松浦雄二・五十嵐博久他)
    • 総ページ数
      300 (203-234)
    • 出版者
      英宝社

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi