研究実績の概要 |
平成27年度の研究は,最初に英国国教会派の説教家達ーWilliam Barlow, Lancelot Andrewes, John Donne, Jeremy Taylorーの火薬陰謀事件説教を取り上げ、それらの説教の特徴を明らかにした。英国国教会派の説教家たちの説教は当然のことながらジェームズ一世擁護が彼らの義務なので、火薬陰謀事件に対する彼らの態度は徹底した反ローマ・カトリック教会である。事件の首謀者達及びその背後で彼らに影響を与えたローマ・カトリック教会への批判は敵意・憎悪で満ちた説教となっている。英国国教会派の説教家達は事件を引き起こしたローマ・カトリック教徒への批判を通してジェームズ一世王朝ひいては英国社会の安定を強く訴えている。彼らと比べるとピューリタン説教家達ーCornelius Burges, Matthew Newcomen, John Strickland, Anthony Burgesーの火薬陰謀事件説教はローマ・カトリック教会・教徒への批判は見られるが事件への批判は型どおりの批判となっている。彼らのローマ・カトリック教会批判は1641年のアイルランド反乱が契機となっているが、彼らは反乱農民を援護しているのはローマ・カトリック教会であると言い、ローマ・カトリック教会への批判を始める。ピューリタン説教家達は火薬陰謀事件日の11月5日に記念説教を行うのであるが、その説教は徐々に反チャールズ一世へと移り、革命が本格化してくると今度は彼らの説教は革命成功のためのアジ的な説教となってくる。当該年度の研究対象のピューリタン説教の火薬陰謀事件説教は説教を通しての革命遂行とその成功の確約を聴衆に訴える説教となっており、英国国教会派説教家の説教内容とは大きな違いを見せている。
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