研究実績の概要 |
本研究は17世紀イギリスにおけるピューリタン説教家による火薬陰謀事件説教に関わる研究である。事件は1605年11月5日、カトリック教徒過激派ジェズイットによるジェームズ一世殺害未遂事件である。事件直後から英国国教会説教家によって事件を糾弾する説教事件日に行われたが、それは事件の残酷性を指摘し、併せてジェームズ一世の神の慈悲による奇跡的救出を賞賛するものであった。この研究中に私はピューリタン説教家も火薬陰謀事件説教を行っていることを知り、新たにピューリタン説教家による火薬陰謀事件説教研究を行う事にした。扱う期間をピューリタン革命前後から王政復古に至るまでとし、ピューリタン説教家の事件に関する説教を取り上げることにした。英国国教会説教の火薬陰謀事件説教とピューリタン説教家の火薬陰謀事件説教の大きな違いは前者においては説教はジェームズ一世体制維持のためであり、後者においては説教は進行中のピューリタン革命成就のためであることである。それゆえ、ピューリタンの説教にはジェームズ一世賞賛は見られず、火薬陰謀事件よりもチャールズ一世打倒を目的とした説教となっている。最終年度においてはMatthew Newcomen,Wlliam Strong, William Bridgeを研究対象としたが、いずれの説教においてもジェームズ一世は登場せず、事件そのものも論じられない。Newcomenではジェズイットの「狡猾」と「残虐性」が強調され、Strongではむしろ王党派との戦いへの勝利が扱われ、Bridgeではイギリス社会改革の必要性が説かれている。王政復古までのピューリタンの火薬陰謀事件説教をほぼ網羅した本研究は英国国教会説教の火薬陰謀事件説教研究の続編とも言うべく研究であるが、ピューリタン説教による火薬陰謀事件説教が何を意図していたかが明らかにされた。
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