研究課題
本研究の主たる目的であったアングロ・サクソニズム生成に関する論文を執筆し、2019年度中に出版される予定の『立命館大学英米文学論集(仮)』(金星堂扱い)に「『アルフレッド』における民族意識操作」として掲載されることが決まっている。この論文では、リンダ・コリーの『イギリス国民の誕生』ではあまり詳しく扱われていない18世紀の仮面劇『アルフレッド』を取り上げ、主人公である9世紀のアングロ・サクソン人の王アルフレッドを激励する彼以降の歴代の英国王が必ずしもアングロ・サクソン系ではないことに注目した。有史以来様々な民族に侵略され、ノルマン征服以降は被支配者の側にあることが多かったアングロ・サクソン系の人々自身の民族意識が、名誉革命以降に徐々に高まっていき、最終的には周辺のケルト系の人々(ウェールズ、スコットランド、アイルランド)との差別化を果たすために用いられるまでになる過程を分析した。また、今後の研究課題として、19世紀のジャーナリズムが民族意識操作に果たした役割について調べるべく、学内の図書館予算から『フォートナイト・レヴュー』のバックナンバーを揃えることができたので、特にクリミア戦争以降の言説のうち、男性性に関する記事を中心に調査を開始した。ここを起点として新たな研究の方向が見えてきたが、その準備にはさらに多くの雑誌や新聞に当たることが必要であることが明らかになり、科研費やその他の資金を調達して順次揃えていきたいと考えている。
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