研究課題/領域番号 |
15K02330
|
研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
吉川 史子 広島修道大学, 商学部, 教授 (50351979)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 神秘主義文学 / 中世英文学 / 宗教散文 / ジャンル / メタファー |
研究実績の概要 |
2018年度は、まず大英図書館が所蔵する写本 Add. MS 37790 に含まれる二つの神秘主義のテクスト (1) ノリッジのジュリアン著 Revelations of Divine Love と (2) マルグリット・ポレート著 Mirouer des Simples Ames Anienties の中英語訳 The Mirror of Simple Souls の類似点と相違点をテクスト構造、修辞技法、語彙の観点において調査し、その成果を6月28日に英国ノリッジ市の University of East Anglia で行われた The 8th International Anchoritic Society Conference に於いて、‘Lexical and Rhetorical Links Connecting Two Texts in British Library Add. MS 37790’ の題目で発表した。 また、The Book of Margery Kempe 中に登場する人物のうち例えを使って話す場面が示されているのはどういう人物か、ノリッジのジュリアン著 Revelations of Divine Love で著者ジュリアンは例えを使って読者に説明するかどうかを調査し、マージェリー・ケンプやジュリアンはほとんど例えを使った説明をしないこと、主に例えを使うのは、彼女達に語りかけるイエスや、聖職者達であることを明らかにし、米国ボストン市の Boston College で行われた 2019 Annual Conference of Mystical Theology Network に於いて、3月1日に ‘Metaphor Users in Late Middle English Women's Mystical Texts’ の題目で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、マルグリット・ポレートとノリッジのジュリアンのテクストの類似点・相違点について調査を終えた段階で、リチャード・ロウルのテクストの研究に着手する予定であったが、ジュリアン、マージェリー・ケンプら女性神秘主義者の文体を分析する上で重要であると以前から感じていた「メタファー」に関する研究を募集する大会を Mystical Theology Network が開催すると知ったため、夏以降はメタファーに関する研究を先に進めることにした。そのため、当初予定していたリチャード・ロウルの研究を進めることができなくなってしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
2019 年度は、談話標識として機能する Nou(現代英語の Now)の使用と中英語期の作品ジャンルとの関係を時代別に編纂されたコーパスである Helsinki Corpus of English Texts を検索して調査することから研究を始める。その検索結果をジャンル別に分類して分析し、7月1日から4日にオーストラリア国立大学で行われる International Conference on Historical Linguistics (ICHL24) で発表する予定である。 ICHL24 での発表を終えた後は、リチャード・ロウルの『生活の形 (The Form of Living)』とウォルター・ヒルトンの『完徳の階梯 (The Scale of Perfection)』の研究に入り、女性神秘主義者と男性神秘主義者の説得的文体の違いに関する考察を深めたいと考えている。これらの作品を調査して、女性神秘主義者と男性神秘主義者の読者を説得するための手法の違いを明らかにする成果を出すことができれば、本研究のまとめに入る予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度中にとりかかる予定であったリチャード・ロウルの作品分析に必要な書籍・資料の代金と、その研究成果を論文として執筆する際に英文校閲にかかる費用を年度末まで残していたが、研究の進捗状況が予定より遅れたため、リチャード・ロウルの作品分析を行うことができなかった。この繰越金額を用いて次年度にリチャード・ロウルの作品分析に必要な書籍・資料の購入と、英文校閲費用の支払をさせていただきたい。
|
備考 |
2018年度の研究成果はまだ反映されていない。
|