研究実績の概要 |
本研究は、時空間パラダイムシフトにより、アフリカ系アメリカ文学の地理的想像力に加えられた変更を解明するものである。大西洋を中心としたアフリカ系アメリカ作家たちの世界観--ボール・ギルロイが「黒い大西洋」と呼んだ海洋パラダイム--は、航空時代の到来とともに、そのナラティブ・パワーを急速に失う。本研究は、この変容した惑星の時空間、歴史家アラン・ヘンリクソンのタームを借りれば「航空時代のグローバリズム」(air-age globalism)、をアフリカ系アメリカ文学史の中心軸に再布置することで、どのような新しい文学史の地平が立ち現れるかを考察するものである。
本年度は、アフリカ系アメリカ人パフォーミング・アーチストで作家でもあるジョセフィン・ベーカーの自伝や児童文学ならびに書簡等を分析し、航空時代の想像力がベーカーの「虹の部族」(国際養子縁組プロジェクト)形成に与えた影響を検証した。その研究成果の一部をアメリカ学会第51回年次大会における日本ー韓国アメリカ学会のラウンドテーブル・セッションで発表した。
前年度まで進めていた研究は、現在執筆している英文の研究書の1章("The Archipelagic Global Imaginary: Walter White and Poppy Cannon")と2章("A Prison Planet: Edith S. Sampson, War Orphans, and Repatriation")としてまとめる作業を行っている。また2015年度の研究成果が、Archipelagic American Studiesに収録され、ア メリカのデューク大学出版局から出版された。
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