本年度は代表者が本課題を基課題とする国際共同研究を前年度に行ったため、基課題である本課題の事業期間を1年延長し、以下の問題意識に基づく研究成果のとりまとめを行った。 代表者である井上は、まず米国軍事占領期から現在に至る「沖縄」(「琉球列島」)をめぐる諸ナショナリティの構築、表象、編成がいかにしてアメリカ研究および沖縄研究を方法論的ナショナリズムに幽閉しているかを理論的かつ実証的に研究し、その成果の一部を研究誌Inter-Asia Cultural Studies(2018年、vol. 19. no. 4)の特集号"Artistic Mediation of Decolonized Body"に論文"Nations in shame and art’s shame: towards a radical politics of image and affect around 'Okinawa'"として発表した。またアメリカにおける現代詩研究の制度が実験詩を「白人」的、自伝的詩を「非白人」的と措定することで人種制度を反復して来た問題をめぐって書評論文"Review: Undoing the Form/Matter Divide in Avant-Garde American Poetics"を学会誌Criticism: A Quarterly for Literature and the Artsに招へい寄稿し、2018年6月に同誌に掲載された。 分担者である越智は、戦後の冷戦期日本において日米安保体制を下支えする文化装置の一つとして「アメリカ文学」および「アメリカ文学研究」がいかに制度化されたかをめぐって論文“Translations of American Cultural Politics into the Context of Post War Japan"を執筆し、Routledge Companion to Transnational American Studiesに寄稿した。
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