本研究は米国社会と文学における「失敗者」と「逸脱者」の表象に着目する。米国の特徴は「成功」に取り憑かれた社会であること。またその歴史は少数の「成功者」のあり方を重要な規範とすることで発展してきた。だが国家の物語は「その他多数」を構成する、様々な意味の「失敗者」や「逸脱者」が残した「顧みられない歴史」の中にも存在する。当研究は「成功者」と「失敗者」の両面を生きた、後者の心情をより深く熟知したマーク・トウェインやウィリアム・ディーン・ハウエルズなどの作家が残した文学作品の中に、また実際の「失敗者」や「逸脱者」が残した文書に、「困難を生きた多数」の記憶と記録が紡ぎ出す「国民の物語」の重要性を探る。
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