研究実績の概要 |
前年度に引き続き、夏と春にアメリカ出張を行い、ニューヨーク公立図書館、コロンビア大学図書館等で資料調査および収集作業を行った。本年度は、女性禁酒物語作家の代表的存在であるメアリ・チェリスの作品を重点的に研究した。AT LION'S MOUTH(1872), THE WORKING MAN'S LOAF(1885), BENCHES WITH NEW PROPS(1891)など後期の作品の詳細な分析ができたことは大きい。 また、関連して研究を進めている禁酒物語における離婚の主題を分析するうえで欠かせないテクストである、Julia M. Friend, THE CHESTER FAMILY, OR, THE CURSE OF THE DRUNKARD'S APPETITE(1869)屋、 Charlotte S. Hilbourne, ALICEWATERS; OR, THESHADOWYVICTORY(1867)などが収集できたことも、今後の研究の進展に大いに貢献するものと思われる。 その間のテクスト分析結果は学内の紀要に論文(原稿用紙約60枚)として発表した。内容は女性禁酒物語作家のひとりハリエット・ストウの文学全体を貫く「解放」の主題を、黒人解放、女性解放という、禁酒運動とともにアメリカ19世紀を彩った「解放」運動との関連において分析したものである。これまで進めてきた男性禁酒物語作家の作品を通して考察してきたジェンダー・バイアスを考えるうえで、一つの突破口となったと言うことができる。
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