最終年度である本年度(平成30年度)は、過去三年間に開発した「ポスト・グローバリズム」的パースペクティヴに基づく研究法を本研究に本格的に適用した結果を、成果として纏め、その有用性を検証した。SpivakやDimockなどの「ポスト・コロニアリズム」理論に基づく、Frank Chin、David Henry Hwang、Ping Chongなどのアジア系アメリカ人の文学・演劇に見られる、地政学的・国家的・文化的「領域横断性」の解明を試みた。国内で入手不可能な文献・映像資料等に関しては、ニューヨーク大学図書館やニューヨーク・パブリック・ライブラリーに赴き入手・閲覧(2019年3月)、芸術家Ping Chongとのインタビューも行った(2018年12月)。さらに、そうして入手した文献・資料の詳細な研究による成果に基づき、Dimockの「ディープ・タイム」理論を使ったアジア系アメリカ文学の短編小説とウイリアム・フォークナーの時空を超えた連続性を論じた論文を刊行(『フォークナー』第20号、2018年5月)ほか、Frank Chinを中心としてアメリカのエスニック・マイノリティとしての「領域横断的」ストラテジーについての口頭発表(日本アメリカ文学会関西支部フォーラム、2018年12月)、David Henry Hwangの「領域横断性」についての口頭発表(アジア系アメリカ文学研究会例会、2019年1月)などを行った。研究協力者・情報提供者である台湾中央研究院Chih-ming Wang、Ithaca College助教授Christine Kitano、ニューヨーク在住の芸術家Ping Chongなどの招聘するなど、国外の研究協力者との間の共同研究を進めるなどして、多角的かつ多極的に研究を展開した。
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