研究課題/領域番号 |
15K02340
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
新田 玲子 広島大学, 文学研究科, 名誉教授 (40180674)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 第二次世界大戦 / 戦争文学 / 平和文学 / ポストモダン / 片渕須直 / この世界の片隅に / サリンジャー / ライ麦畑で捕まえて |
研究実績の概要 |
2018年度は、2016年末に公表され、予想以上に大きな反響を呼び、現在もロングランを続けている、原爆をテーマにした作品、『この世界の片隅に』に注目し、この作品では当時の生活や街並が克明に記述されているにもかかわらず、戦争や原爆の描写においては時に不正確、時にありえない描写となっているのはなぜなのかを、第35回国際文学心理学会の場や、各国研究者仲間のあいだで議論した。日本映画という題材は、本研究が対象とするアメリカ文学と直接関係してはいないが、戦争から遠ざかってゆく中で、新しい世代に戦争や平和についてどのように伝えてゆくかという本研究のテーマと深くかかわっており、アメリカ文学における平和への戦略を考察する上で多くの示唆を得た。ただ、研究材料が映画であり、多くの情報がマスメディアから得られたものであったため、論文として完成させることが難しく、残念ながら専門誌に英語で公表することはできなかった。 2018年度はまた、2016年度にサリンジャーと戦争についての口頭発表を行った際に提案されていた、サリンジャーの代表作で第二次世界大戦後の豊かなアメリカ社会における青年の姿を描き、1960年代のカウンターカルチャー世代の若者に大きな影響を与えたとされる『ライ麦畑で捕まえて』(1951)を、サリンジャーの死後公開されたサリンジャーの新しい個人情報などをもとに、戦争文学として論じ直すという試みに挑戦した。この研究については、2019年度の国際文学心理学会でさらに議論したうえで、論文として公表したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究予定材料の大まかな枠組ができあがり、個々の作家の作品について議論したり、枠組の補強を行う段階に入っているから。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度からの研究の引き継ぎとして、一見、戦争とは直接関係していないように見える、J・D・サリンジャーの代表作、『ライ麦畑でつかまえて」に、どれくらい戦争の影響が窺えるか、また戦争作品としての性格があるかを、6月末に開催される国際文学心理学会で議論し、新しい平和文学として読み直してみたい。 また、今年度は最終年度であるので、これまでの研究成果の総まとめを行い、それを今年度の後半における国際学会で発表したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ごく僅かな残高のため、今年度中に有効な方法で利用できなかった。来年度は海外発表をふたつ予定しており、何かと出費が多いので、少しでも科研費を有効利用するために繰り越した。
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