研究課題
2年前にJ.D.Salingerの戦争を題材とした作品を用い、彼にとって戦争がいかに重要な意味を持つか、国際学会で発表したとき、それが他の作品にも言えることを証明するために、戦後の豊かなアメリカを舞台にした代表作、The Catcher in the Ryeを戦争作品と論じて欲しいと要請された。これを受けて準備してきた研究を、2019年6月にウィーンで開催されたThe International Conference of Literature and Psychologyで発表した。これは、サリンジャー研究に新たな一石を投じる発表として高く評価され、出席者の紹介を受けてアメリカの雑誌、Literature and Beliefへ投稿し、審査の結果起用され、公表された。これにおいて、サリンジャーと戦争についての研究は当初の予定を超えた範囲にまで広がっただけでなく、より大きな成果を挙げて終了することができた。本年度はまた最終年度にあたっていたため、今年度初めまで4年間かけて行ってきた第二次世界大戦後のアメリカ文学における戦争の扱われ方の各論を、より広い視野から捉え直そうと、19世紀後半に活躍したStephen Craneや、20世紀前半を代表する作家であり、第一次世界大戦によって作家活動の基盤を作ったErnest Himeingwayら、第二次世界大戦以前に活躍した作家の戦争観を加えて比較分析した。そして、第二次世界大戦後の作家が戦争に対して抱く危機感がそれまで以上に過敏で過大なものになっている点を明らかにし、その理由について考察した。この研究成果は、2020年1月ハワイで開催されたHawaii International Conference on Arts & Humanitiesで発表し、好評を得た。
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Literature and Belief
巻: vol. 39, no. 2 ページ: 51-66