研究実績の概要 |
平成27年度の研究計画としては、おもにマサチューセッツの水夫の航海記、 たとえば、Amasa Delano, Delano’s Voyage of Commerce and Discovery (1817),Owen Chase, Narrative of the Most Extraordinary and Distressing Shipwreck of the Whale-Ship, Essex, of Nantucket (1821), Richard Henry Dana, Jr., Two Years Before the Mast(1840) 等を調査・検討し、さらに船舶の難破の実例を取り上げた海洋ナラティヴを参考文献として収集することであった。 研究成果としては、日本アメリカ文学会第48回大会で発表した「デラーノ船長のマサチューセッツ ― “Beito Cereno” と奴隷解放論」(於関西大学、2011)を上記Amasa Delano, Delano’s Voyage of Commerce and Discovery (1817)等を参照しつつ論文としてまとめ、『身体と情動―アフェクトで読むアメリカン・ルネサンス』(竹内勝徳・高橋勤編著、彩流社、2016)の一部として出版した。さらに九州アメリカ文学会第58回大会において発表した「殉教のレトリックーコンコード、プリマス、ハーパーズ・フェリー」(於熊本大学、2012)の内容を発展させた論文「死の修辞学」を『ジョン・ブラウンの屍を越えてー南北戦争とその時代』(松本守・高橋勤・君塚淳一編、金星堂、2016)の一部として刊行した。またソロー『コッド岬』の舞台となったコハセット海岸を訪れた訪問記「コハセット海岸を歩く」を『命の泉を求めて』(日本ソロー学会編、金星堂、2015)に掲載した。 研究発表としては、中国湖南大学で開催された国際学会International Symposium on Ecopoetics, Ekphrasis and Gary Snyder Studiesにおいて“The Poetics of the Wild: From Thoreau to Gary Snyder” (November 12-15, 2015、招待発表)を行った。. 海外研修としては、平成27年9月6日より10日間ハーヴァード大学のワイドナー図書館において調査・資料収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究計画としては、アメリカン・ルネサンス文学における船舶の座礁・難破のモチーフについて整理する。申請者が過去に論文を執筆したメルヴィルの主要作品について再読し、航海記の観点から、船舶の諸問題がいかにドキュメントされているか検討したいと考えている。さらにOwen Chase,のNarrative of the Most Extraordinary and Distressing Shipwreck of the Whale-Ship, Essex, of Nantucket (1821)、あるいは Richard Henry Dana, Jr.のTwo Years Before the Mast(1840)とメルヴィルの Moby-Dick との関係性を、実証的な観点から再検討したい。 実質的な研究方法としては、備品として新たな図書の購入が必須となるほか、貴重な資料が集中する東京の諸機関で資料収集が必要となる。さらに、成果発表、資料収集を含めて、東京での研修を行うほか、夏期には10日程度アメリカ合衆国の大学等の研究機関において研修および資料収集を行う予定である。 (1)備品として、海洋ナラティヴ関係図書、アメリカ史関係図書を購入する。 (2)国内の資料収集は、九州大学図書館、西南学院大学図書館のほか、国立国会図書館、東京大学附属図書館等で行う予定である。 (3)海外での資料収集に関しては、ハーヴァード大学図書館、およびカリフォルニア大学デイヴィス校の図書館等で行う。
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