研究課題/領域番号 |
15K02341
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 勤 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (10216731)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マサチューセッツ / ソロー / メルヴィル / 座礁 / 環大西洋 / 船舶技術 / 航海記 / 海洋ナラティヴ |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究計画としては、おもにマサチューセッツの水夫の航海記を調査・検討し、船舶の難破の実例を取り上げた海洋ナラティヴを参考文献として収集することであった。こうした航海記の調査および収集と併行して、 Herman Melville の海洋小説 Moby-Dick (1851)、 “Benito Cereno” (1855) 等を再読した。また船舶の難破や座礁をモチーフとした文学作品、奴隷船の歴史的記述、あるいは船舶技術の解説書等の書籍を50冊程度購入した。 研究成果としては、Amasa Delano, Delano’s Voyage of Commerce and Discovery (1817)を参照したメルヴィル論「不安の感染」を『身体と情動―アフェクトで読むアメリカン・ルネサンス』(竹内勝徳・高橋勤編著、彩流社、2016)の一部として出版したほか、アメリカン・ルネサンス文学に関連する論文「背後の自然――『ウォールデン』再読」『英語英文学論叢』(九州大学英語英文学研究会)第67集、2017年、pp. 1-18 を執筆した。 また関連する研究発表としては、第62回九州アメリカ文学会において「エマソンの書き換えー弔辞「ソロー」における思想の訣別」九州アメリカ文学会(於九州大学、2016年5月7日)、および「野生の文化論―ソローからレヴィ=ストロースへ」(招待発表)日本英文学会九州支部大会(於中村学園大学、2016年10月23日)を行った。. 海外研修としては、平成29年3月16日より10日間カリフォルニア大学デイヴィス校のシールズ図書館において調査・資料収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度中にアマサ・デラーノの航海記を参照し、メルヴィル「ベニト・セレーノ」論を執筆し、共編著『身体と情動―アフェクトで読むアメリカン・ルネサンス』(竹内勝徳・高橋勤編著、彩流社、2016)の一部として刊行できたことで、一定の成果が得られたと考えている。 さらに18世紀後半から19世紀の航海記、あるいは海洋ナラティヴを50冊程度購入し、今後の研究の基盤となる資料が整った。また29年度3月に行ったカリフォルニア大学図書館での研究もきわめて有意義であったと考えている。 今後Henry Thoreau のCape Cod、メルヴィルの海洋小説等、アメリカン・ルネサンス文学における座礁のモチーフについてさらに考察を進めたい。特に九州アメリカ文学会第59回大会で研究発表を行った『コッド岬』論「事故と座礁の物語―アメリカン・ルネサンス文学における悲劇性」(於県立長崎シーボルト大学、2013)を論文として改稿し出版する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度が本研究課題の最終年度であり、船舶の座礁、あるいは暴発事故に関する文学作品の論文集を共著のかたちで構想したい。19世紀における船舶の座礁や難破が文学的想像力のなかでどのように形象化されたかを考察したいと考える。また関連したの研究計画としては、現在執筆中の単著書『野生の詩学―ソロー、ミューア、スナイダー』を刊行することであり、その一部において『コッド岬』論を執筆することである。さらにソローの生誕200年を記念したシンポジウムを日本英文学会九州支部大会において企画する予定である。
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