身体における自己の主体は脳にではなく、臓器機能の役を免れ身体の周縁を巡る漂白の細胞、免疫(インミュニティ)に宿る。ここに身体における縁と無縁の逆説の関係がある。本研究の目的はこの免疫学の命題を詩学に導入し、文化の主体のありかを、コミュニティ内部 から排除され、周縁 に置かれた「インミュニティ(免疫)=アジール」にあると措定し、マクロ・中央集権・ リアリズムの世 界観をミクロ・周縁・虚構=無視・排除されたものの方から逆説・異化し、新 しい文化理論を構築することであった。対象地域はオクシデントの表象を負い、ヨーロッパ独自の死生観=煉獄の概念が誕生 したアイルランド・聖パトリックの煉獄である。
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