研究課題/領域番号 |
15K02351
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
溝口 昭子 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (00296203)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 南アフリカ文学 / モダニズム / 植民地近代 / トランスアトランティック / 国家意識 |
研究実績の概要 |
2015年6月には黒人研究の会第61回全国大会で「Shakespeare 作品のツワナ語翻訳を巡る政治学 ―Sol Plaatje の Diphosho-phosho(1930) の場合」というタイトルで発表し、PlaatjeのShakespeare作品翻訳と植民地近代における民族の存続との関わりを論じた。 また、10月に日本英文学会関東支部第11回大会にて行なわれたシンポジウム「カリブ・アフリカ文学と「民衆」」にて「「国民未満」から対自的民衆へ--H. I. E.ドローモの作品を中心に」というタイトルで発表した。この発表では「国民意識」に近い「帝国臣民」意識を持っていた南アフリカのアフリカ系知識人3名の思想を、汎アフリカ主義の影響を含めて論じた。 2016年3月には、論文 "The Life and Death of South African Emerson in Olive Schreiner's The Story of an African Farm"を東京女子大学の『英米文学評論』(62巻)で発表した。この論文では「植民地的近代とモダニズム的要素」「米国思想の影響」「国家意識の涵養」の3点と関連して、南アの白人知識人および作家のアメリカとの関係を、白人女性作家Olive Schreinerの小説The Story of an African Farmについて論じた。特に、Emersonが独立国アメリカ人として持っていた国民的identityおよび理想主義から深く影響を受けていたSchreinerが、この作品では彼の理想が南ア(英国の植民地でしかも白人入植地であるがアメリカと異なり人口の大多数が非白人)で機能しないことを明示していることを明らかにした。また「国民的identity」が成立せず幾重にも分裂していることがモダニズム的世界観を提示していることも示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「植民地的近代とモダニズム的要素」「米国思想の影響」「国家意識の涵養」の3点と関連して、南アフリカの白人知識人および作家がアメリカ社会をどう捉えていたかを論じる際に、当時の南アフリカの白人知識人がどうアメリカを意識したかという背景に関しての資料収集がまだ不足しており、白人女性作家Olive Schreinerの小説The Story of an African Farmについて研究論文にその部分の知見を含めることができなかった。また、彼女のもう一つの小説Undineについて論文で論じるところまで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は初年度に十分行なえなかった19世紀後半から20世紀初頭にかけての南アフリカ白人知識人とアメリカとの関係についての資料収集を行い、また、Plaatjeがツワナ語で書いた文献を英語に翻訳してもらったものを読み込み、それらをSchreinerおよびPlaatjeのBoer戦争を巡る言説の分析に生かし、それを論文の形にする。また、シンポジウムで発表した「「国民未満」から対自的民衆へ--H. I. E.ドローモの作品を中心に」を基にした論文を「植民地的近代とモダニズム的要素」「米国思想の影響」「国家意識の涵養」と、より密接に絡めて執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
諸事情で海外での資料収集を見送ったため、海外出張費が発生しなかった。さらにSol Plaatjeが執筆したツワナ語文献の英語への翻訳に対して30万円前後の謝金を払う必要が次年度に生じることが分かったため、初年度で残高348,275円を消化せずに、次年度使用額として残すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
まず、ツワナ語文献の翻訳に30万円前後を謝金として支払う。あとは当初申請したとおり、資料収集のための海外出張費に約60万円必要となるためその一部に充てる。
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