19世紀前半のアメリカでは社会改革運動が盛りあがり、大衆詩人たちも加勢してプロテストの声をあげた。けれどもそれらの詩を分析したところ、けっして叛逆の歌ではないことが分かった。扇情的でも露悪的でもない。それらは正義を信じる声であり、勇気を鼓舞する詩であった。たとえばローウェルの女工たちのストライキの詩も、建国の父祖たちの理念や勇気を引きよせようとする歌だった。自由土地運動の詩も、政府や地主を糾弾したのではなく、神の認めた権利として土地を求めていた。これは、アメリカ社会がいまだ階層化されず分断のない社会と見なされていて、運動家たちがその均質社会の内部から改革の声をあげていたことを示す。
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