研究課題/領域番号 |
15K02367
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤井 光 同志社大学, 文学部, 准教授 (20546668)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 現代アメリカ文学 / 翻訳 / 戦争文学 / 早稲田文学 / 放送大学 / 東京国際文芸フェスティバル |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究は、21世紀のアメリカ文学が「国民文学」としての枠組みから次第に離れ、無国籍性を特徴とする文学に移行しつつあること、同時に、合衆国外に生まれ英語を母国語とはしない作家たちの活動が重要性を増し、その結果、翻訳を主題とした文学に接近しつつあること、の二点を中心として、アメリカ文学の新潮流を整理するとともに、社会一般にその動向を認知してもらうことを目指した。 具体的には、同年度にエッセイ集『ターミナルから荒れ地へ アメリカなき時代のアメリカ文学』(中央公論新社)を2016年に刊行し、そこで現代アメリカ文学の特徴を無国籍な「ターミナル化」と捉えるとともに、そこで活動する作家たちが、国境を越えて展開するグローバル資本主義などの諸力が生み出す「荒れ地」を描こうと試みていることを論じた。その他、日米文学で生じている相似性や、戦争文学が合衆国を離れて展開されているという特徴、非英語圏出身の作家たちによる英語を変形させる試みなどを紹介した。 そうした現代アメリカ文学の特徴と各国語文学の現状との接点を探るべく、編集委員を務める『早稲田文学』においては、世界文学特集を2015年秋号にて企画し、スペイン語、ロシア語、ドイツ語、トルコ語、バスク語、クロアチア語の若手翻訳者との対話を行った。 加えて、平成28年度より開講される放送大学のオムニバス科目「世界文学への招待」に分担講師として参加し、20世紀後半から21世紀にかけてのアメリカの戦争文学、および21世紀の移民文学の講義を担当した。 また、アメリカの作家マヌエル・ゴンザレスの短編集『ミニチュアの妻』の翻訳を白水社より、ダニエル・アラルコンの長編『夜、僕らは輪になって歩く』の翻訳を新潮社から刊行したほか、2016年3月に開催された東京国際文芸フェスティバルに参加し、セス・フリードと西加奈子とのトークセッションのモデレーターを務めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エッセイ集という形で現代アメリカ文学の見取り図を提示したことにより、研究全体の方向性をかなりの程度まで定めることができたと言える。また、翻訳や放送大学、文芸誌、文芸フェスティバルといった場での活動機会を与えられたことで、アメリカ文学の新動向を一般読者に認知してもらう点でも大きな前進があった。 英語論文でも執筆の機会があり(平成28年度刊行予定)、また、各国語の文学との接点を探るという意味でも、言語の枠を越えて研究交流を実現できたため、より広い視座から現代アメリカ文学を捉え直すことが可能になりつつあるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は最終的には英語での単著刊行に向けての原稿を蓄積することを目標としている。そのため、平成28年度以降は、27年に得た知見を英語論文という形で発表していくことによりエフォートを割くべきと思われる。また、海外作家へのインタビューをさらに行うことで、創作の現場に接近することも引き続き試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りに所定の交付金を使用したが、東京国際文芸フェスティバルの参加にあたっての費用の一部を、主催団体である日本財団が負担したため、わずかながら次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究経費総額には大きな変化はないため、予定通り研究を遂行していく計画である。
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