本研究は、現代アメリカ小説が「翻訳」という現象に接近しているのではないかという視点から、21世紀の創作を理解することを試みたものである。第一にアメリカ合衆国の外に生まれ、英語を母語としない移民作家による、英語での創作においては、創作する行為それ自体が、言語横断的な「翻訳」という要素を含みこまざるを得ない。一方で、アメリカ作家たちは、特定の土地を描くに際しても、土着性ではなく、それが他の土地と代替可能であることを重視する(アンソニー・ドーアなど)。その根底にあるのは、翻訳研究で翻訳可能性/不可能性をめぐる議論でもしばしば言及される、「交換可能性」という概念である。
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