本研究の目的は、20世紀アメリカを代表する写真家ウォーカー・エヴァンズとモダニスト文学者との相互影響関係を実証することである。研究二年目の本年は、これまで文学・写真研究者双方から看過されてきたエヴァンズとヘミングウェイ、エヴァンズとフォークナーの相互影響関係に焦点をあわせて研究を進めた。 本年度の特に得難い経験としては、国際ヘミングウェイ学会とサウスイースト・ミズーリ州立大学のフォークナー・センター主催のフォークナー・ヘミングウェイ学会という、国際学会への参加が挙げられる。国際学会にて第一線の研究に触れられたこと、また海外の研究者と直接交流できたことにより、今後研究をすすめるうえでの非常に貴重な示唆が与えられた。 研究成果については、日本ヘミングウェイ協会全国大会、国際フォークナー・ヘミングウェイ学会で口頭により発表した。前者については、今後、論文化してジャーナルに投稿予定である。後者に関しては、すでに論文化したものが共著としてサウスイースト・ミズーリ州立大学より出版されることが決定している。 以上のように、初期Evansの「ストレート」な視覚表現と「モダニスト的」活字表現との影響関係を実証することにより、視覚文化と活字文化との壮大な交渉のごく一端を照射しようと試みる本研究の目的は、本年度の研究においても一定程度は達成されたと考える。次年度以降も、海外アーカイヴ所蔵の一次資料を用いて実証的研究を行う。
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