研究課題/領域番号 |
15K02375
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松村 剛 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00229535)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 中世フランス語 / フランス語史 / 語彙論 / 文献学 / 言語地理学 |
研究実績の概要 |
研究計画に基づき、本年度は以下の研究を行った。 ジャン・ダンティオッシュによって1282年にアッコンで翻案された中世フランス語版キケロ『修辞学』(Rectorique de Marc Tulles Cyceron) に関して、シャンティイ、コンデ博物館所蔵の第433番写本のマイクロフィルムと、Elisa Guadagnini による校訂版 (La Rectorique de Cyceron tradotta da Jean d'Antioche. Edizione e glossario, Pisa, Edizioni della Normale, 2009) とを比較検討し、より確実なテキストの作成に着手した。各種辞書および先行研究における中世フランス語版キケロ『修辞学』の引用を再検討し、それらの解釈の妥当性を文献学的に調査した。さらに、中世フランス語版キケロ『修辞学』に含まれる、歴史的・地理的に注目すべき単語・表現を収集し、この作品の意義を裏付ける点を強調し、フランス語史ならびに言語地理学における従来の知見の補完を試みた。中世フランス語版キケロ『修辞学』と、この翻案の基になったキケロ『発想論』と偽キケロ『ヘレンニウス宛修辞学』を比較検討し、翻案の手法がいかなるものであるか、その特徴を浮き彫りにした。関連するラテン語作品ならびに中世フランス語作品を収集し、それらを批判的に検討し、補足的な情報を収集した。地方語の問題に関しても同様に、言語地理学の成果を活用すべく、該当する研究書・論文を調査した。その研究によって、アッコンで作成された中世フランス語版キケロ『修辞学』の作者ジャン・ダンティオッシュが使用している言語の特徴に焦点を当てた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジャン・ダンティオッシュによって1282年にアッコンで翻案された中世フランス語版キケロ『修辞学』の現存唯一の写本のマイクロフィルムおよび Elisa Guadagnini による校訂版はすでに入手しており、照合を予定通り進めている状況である。翻案の基になったキケロ『発想論』と偽キケロ『ヘレンニウス宛修辞学』の校訂版も入手しており、中世フランス語版との比較検討を予定通り進めているところである。アッコンおよびその周辺の聖地で書かれた中世フランス語の文献に関しても、収集を始めており、それらの作品の言語の特徴を調査している。このように当初の研究計画に従って進めている段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、平成28年度および平成29年度に以下のような研究を推進する予定である。 平成28年度においては、ジャン・ダンティオッシュによって1282年にアッコンで翻案された中世フランス語版キケロ『修辞学』のテキスト確定を、シャンティイ、コンデ博物館所蔵第433番写本のマイクロフィルムと、Elisa Guadagnini による校訂版とを比較検討する作業を通して続行する。従来看過されてきた興味深い単語・表現をこの作品から収集する作業を続け、各種辞書・言語地図を活用し、それらの語彙の歴史的・地理的な意義を明らかにする作業を進める。中世フランス語版キケロ『修辞学』と、この翻案の基になったキケロ『発想論』と偽キケロ『ヘレンニウス宛修辞学』の比較作業を続行し、翻案の手法を明らかにしてゆく。 平成29年度においては、中世フランス語版キケロ『修辞学』のテキスト確定を、上述のシャンティイ、コンデ博物館所蔵第433番写本のマイクロフィルムと、Elisa Guadagnini による校訂版とを比較検討する作業を基に完成させる。この作品に含まれる、フランス語史および言語地理学の観点から見て興味深い単語・表現の収集を完成させ、各種辞書・言語地図を活用しつつ、それらの語彙の意義を明確にする。中世フランス語版キケロ『修辞学』と、この翻案が基にしているキケロ『発想論』と偽キケロ『ヘレンニウス宛修辞学』の比較作業を完成させ、単語・表現のレベルでの翻案の手法を明確にする。
|