研究実績の概要 |
研究計画に基づき、本年度は以下の研究を行った。 昨年度の研究に基づき、ジャン・ダンティオッシュ (Jean d'Antioche) によって1282年にアッコンで翻案された中世フランス語版キケロ『修辞学』(Rectorique de Marc Tulles Cyceron) の、現在の文献学的要請に対応した水準のテキスト確定を、シャンティイ (Chantilly) のコンデ博物館所蔵第433番写本のマイクロフィルムと、Elisa Guadagnini による校訂版 (La Rectorique de Cyceron tradotta de Jean d'Antioche, Edizione e glossario, Pisa, Edizioni della Normale, 2009) とを比較検討する作業を基に完成させた。また、各種辞書・先行研究における中世フランス語版キケロ『修辞学』の引用再検討の作業を完成させ、それらの解釈の妥当性を文献学的に調査し、従来の知見を補足した。さらに、中世フランス語版キケロ『修辞学』に含まれる、フランス語史的・言語地理学的に興味深い単語・表現の収集を完成させ、各種辞書・言語地図を活用しつつ、それらの語彙がフランス語史と言語地理学の観点からもつ意義を明確にした。他方、中世フランス語版キケロ『修辞学』(Rectorique de Marc Tulles Cyceron)と、この翻案の基になったラテン語のキケロ『発想論』(De Inventione) と偽キケロ『ヘレンニウス宛修辞学』(Rhetorica ad Herennium) の比較作業を完成させ、単語・表現レベルでの翻案の手法を明確にした。それらに加えて、文献学にとって必須の作業である、ラテン語、フランス語の諸作品の校訂版の収集ならびに批判的検討を続け、その問題点、意義を明らかにした。
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